「診療所の儲けは8.8%」と示した財務省の人海戦術 猛反発の医師会、「恣意的」の批判は妥当なのか

2024年度は、診療報酬の改定年である。2024年度予算の編成作業がヤマ場を迎え、医療・介護の報酬が同時に改定される中で、医療はとりわけ注目度が高くなっている。
今回の同時改定は、これまでにない環境での改定になっている。それは、顕著に物価が上昇する中での同時改定である。
介護保険制度は、2000年度に創設された。だから、介護保険制度は、顕著に物価が上昇する時期を経験したことのない制度といえる。診療報酬は、かつて1970年代にインフレに直面する中で改定が行われたことはあったが、現在の当事者には、その改定作業を体験したことのある人はほぼいない。
その意味で、目下の物価上昇を踏まえながら、どのように診療報酬・介護報酬を改定するかが、今回ならではの課題として問われている。
医療と介護、インフレ下で処遇改善の優先度
岸田文雄内閣では、持続的な賃上げを喚起しようとしており、医療・介護従事者の処遇改善にどうつながるかも注目されている。
特に、介護従事者は、医療よりも処遇改善の必要性が高いとみられており、介護報酬は処遇改善が可能な程度に引き上げられるものとみられる。もちろん、原資の確保が必要となる。介護報酬の原資は、介護保険料と税金と利用者負担である。
そのうえに、診療報酬も大幅アップとなると、さらにそのための原資の確保が必要となり、医療保険料と税金の負担と患者負担がさらに重くなる。
医療従事者の所得事情は、介護とは異なっている。確かに、処遇改善が必要な低所得の医療従事者もいる。しかし、近年そこそこ潤っている医療機関がある、との指摘がなされた。
それは、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会が、11月20日に鈴木俊一財務大臣に手交した提言書である「令和6年度予算の編成等に関する建議」である。
この建議では、2022年度に診療所の経常利益率が、平均で8.8%にのぼっていることを指摘したのである。
この経常利益率はどのように算出されたのか。
それは、財務省財務局が行った「機動的調査」において、全国の医療法人が提出している事業報告書等を利用可能なものをほぼすべて分析して算出されたものである。財政制度等審議会の建議を取りまとめる過程で、その数字が示された。
「機動的調査」とは、どのように行われたのか。
そもそも、医療法人は、事業年度が終わると、医療法に基づき、事業報告書等を各都道府県知事に届け出なければならない。そして、医療法施行規則に基づき、都道府県知事は過去3年間の事業報告書等を閲覧できるようにすることとなっている。
報告資料の電子化が道を開いた

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