陸上自衛隊での性被害を実名で訴えてきた元自衛官の五ノ井里奈さん(24)が13日、日本外国特派員協会(東京都)で記者会見した。加害者への有罪判決から一夜明け、「この闘いに無駄なものは何もないが、正しいとは思っていない。闘うという選択肢ではなく、誰もが夢と希望を持ち、声を上げなくてもいい社会になってほしい」と呼びかけた。
強制わいせつ罪に問われた元隊員3人に対し、福島地裁が12日、それぞれ懲役2年・執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。五ノ井さんは判決の前夜は眠れず、「命を削って法廷で彼らと向き合ってきた。正しい判決が出なかったら、私は生きていけるだろうか」と悩んだという。「悪ふざけでは済まされない、罪は罪だと訴えてきたことが全面的に認められほっとした。ただ、彼らに心から反省してほしいという私の思いが伝わらなかったのは残念」と話した。
五ノ井さんの告発をきっかけに、自衛隊の全組織を対象にしたハラスメントに関する特別防衛監察が実施された。防衛省は監察結果や有識者会議の提言を踏まえ、ハラスメント対策の見直しを進めている。東北出身の五ノ井さんは東日本大震災での自衛隊の支援活動に助けられ、入隊を決意した。「自衛隊が純粋に好きで感謝しているからこそ、誰もが働きやすい環境に根本的に変わってほしいし、変わってくれると信じている」と期待を込めた。
今後について問われると「とにかく自由に自分らしく生きていきたい。私の言葉が、誰かの勇気や(声を上げる)きっかけになるのであれば、いろいろな人に体験をお話ししたい」と表情を緩めた。【松浦吉剛】