28人が犠牲になった2021年7月の熱海土石流災害の損害賠償訴訟で、遺族ら住民側被害者の原告のうち10人が新たな弁護士を選任した。静岡地裁沼津支部で訴訟の弁論準備手続きが行われた13日、新弁護団が記者会見を開き「真相究明を求めるのが新弁護団の活動目標」と説明した。旧弁護団と対立する意図はなく、バックアップをしたいという。今後の裁判日程では新旧の弁護団がそろって参加する。【石川宏】
新弁護団の池田直樹弁護士は「早期和解、早期解決を目指す中で(旧弁護団は)真相究明を行政報告書に頼った。また、検証が裁判を遅くさせる恐れを抱いていた。しかし、もっと独自の検証を進めたいと思う被害者もいた。被害者に寄り添う」と説明した。新弁護団の活動目標として(1)土石流の人為的背景、土木工学的原因をより深く究明する努力をする(2)伊豆山での被害再発防止策を検証し、安全な帰宅を実現する――などを示した。
遺族「自分が納得できる裁判を」
記者会見で被害者も思いを述べた。父を災害関連死で亡くした伊東真由美さんは「私は遺族なので、損害賠償よりも本当のことを知りたい。損害賠償を求める人も、真相究明で原因を突き止めなければ『あなたの責任だからお金を払いなさい』と言えない。どんな立場の人も真相究明を求めている」と述べた。自宅が全壊した太田滋さんは「根本は同じだと思うが、自分が納得できる裁判ができると思い、新弁護団にお願いした」と述べた。
弁論準備手続きは非公開で行われたが、旧弁護団によると、土石流が起きた盛り土には2012年には雨水が流れた溝(ガリ)が、19年には穴が確認されており、その時点で県と市は盛り土撤去の措置命令を発出すべきだったと新たに主張したという。
今後の裁判日程も決まった。来年5月22日の非公開の弁論準備手続きを経て、7月10日に公開の口頭弁論が開かれることになった。口頭弁論は土地所有者を相手取った訴訟と、行政を相手取った訴訟の審理が併合されてからは初となる。