石巻市、能登地震被災者に2次避難先提供 「東日本」経験者の地区に

宮城県石巻市の斎藤正美市長は12日、能登半島地震の被災者に災害公営住宅(復興住宅)を2次避難先として提供すると発表した。遠方からの移動支援金として1世帯あたり一律20万円を支給し、1年間家賃などを免除する。避難先は東日本大震災の被災者らが新たなコミュニティーを築いた地区。住民は「同じ境遇で痛みがわかる。自分たちも恩を受けたお返しに温かく迎えたい」と話す。
市によると、避難先として提供するのは石巻駅南東の湊地区の復興住宅。まとまっての入居も考慮し同地区に10戸程度を準備し、希望に沿い別の場所や間取りにも対応するという。駐車場使用料や敷金も免除。いずれも期間は1年間だが、被災状況に応じ延長も検討する。斎藤市長は「安らぎの場と思ってもらえることが一番」と話した。
「東日本大震災と重なる」
湊地区の吉野町復興住宅がある町内会「第一吉野会」会長の石森峻さん(85)は能登半島地震に心を痛め「自分たちの経験と重なる。我が家も道路がしばらく通れず大変だったが、能登はもっと大変そうだ」と思いやる。
石森さんは震災の津波が自宅の1階天井まで押し寄せ、自宅を再建するまでの約2年半、長男が暮らす山形市に避難した。当初の避難所で、余震のたび跳び起きた当時を振り返り「最初は石巻を離れたくなかったが、落ち着いた場所に行きようやくほっとできた。何より山形の人たちが芋煮会や花笠まつりでもてなしてくれ、本当にありがたかった」と振り返る。
石巻に戻ってからは元々吉野町に暮らす約35世帯と新たに移り住んだ復興住宅の住民らを合わせた計約180世帯の町内会づくりに尽力。集会所で談笑する「おちゃっこ会」や花壇作りなどで交流し、新旧の住民同士が助け合うコミュニティーを作り上げた。
石森さんは能登の被災者に「とにかく今は安心して住むところが大事。遠く離れた場所だが、来てもらえるなら温かく迎えたい。お互い助け合って過ごせたら」と話す。問い合わせは石巻市住宅課(0225・95・1111)。全国の自治体が避難先となる公営住宅などを確保し、国土交通省がホームページで一覧を掲載している。【百武信幸】

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