避難所で試験勉強 本番迎えた高3「大好きな地元、復興させたい」

約49万人が出願した大学入学共通テストが13日、全国668会場で始まった。金沢大角間キャンパス(金沢市)では13日朝、みぞれが降る中、参考書などを手に試験場に向かう受験生の姿が見られた。この会場では、能登半島地震の被災地で避難生活を送りながら勉強してきた高校生らも本番を迎えた。
石川県七尾市の県立七尾高校からは189人が挑んだ。壊滅的な被害を受けた珠洲(すず)市などで被災した生徒もおり、学校は前日にバスをチャーターして生徒を乗せ、会場近くのホテルまで送り届けた。
「落ち着いて、実力を出し切って」。13日朝、黒坂昭弘副校長が一人一人に声を掛けて送り出すと、生徒らは「頑張ってきます」と笑顔で応じ、路線バスで会場に向かった。
七尾市内の自宅が被災した3年の妹尾瞳翠(ひすい)さん(18)は「家の片付けや断水で生活が大変だ。余震も怖くて、勉強時間がすごく減ってしまった。でも、やれることはやったつもり」と話した。
岩端長世(いわはなながせ)さん(17)は「ハンディは大きいが、地震にとらわれていてもどうにもならない。前を向いて、楽しむつもりで臨みたい」と気持ちを切り替えた。
同校は現在も休校中だが、9日から自習室や空き教室を生徒に開放し、連日約50人の3年生が自習に励んでいる。校舎は損傷を免れたものの、教室の床はロッカーから飛び出した荷物が散乱したままだ。銭元勝大さん(18)は「自宅に亀裂が入り、余震が怖くて勉強に集中できない。学校に来れば友人もいて勇気付けられる」と語った。黒坂副校長によると、生徒からは勉強できることへの感謝の言葉も聞かれるといい、「教師の方が逆に励まされています」と目を細める。
金沢学院大(金沢市)でも13日、珠洲市の県立飯田高校の生徒が受験した。避難所で勉強を続けてきた同校3年の大句(おおく)有華さん(18)は「地震がなければもっと勉強できたかも、と思うこともある。大好きな地元を復興させるためにも持っている力を発揮したい」と話した。
前節子さん(52)は、12日に学校が手配したバスで会場に向かう同校3年の長男を送り出した。自宅は倒壊し、ガレージにバーベキュー用のテーブルを出して家族4人で生活している。「息子も昼は片付けを手伝い、夜はランタンの明かりで勉強している。暖房は灯油ストーブだけでつらかったと思うが、弱音は吐かなかった。全力で頑張ってきてほしい」とエールを送った。【稲生陽】

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする