九州の伝統「朝課外」、廃止・見直しの動き広がる…生徒「睡眠時間削られるのは間違いない」

教員や生徒の負担軽減などを背景に、鹿児島県内の高校で1時間目の授業の前に行っていた「朝課外」を廃止する学校が増えている。一方、学習時間の確保などのため、独自の取り組みを行う学校も出ている。(井芹大貴)
昨年12月18日午前8時過ぎ。県立武岡台高(鹿児島市)では、各教室で生徒たちが問題集を解いたり、読書をしたりと、おのおのの時間を過ごしていた。
同校は午前7時40分から行っていた朝課外を2022年度から廃止。代わりに、午前8時から20分間、自習を行う「準備の時間」を設けた。全校生徒の約6割がスクールバスや路線バスで通学しており、午前7時過ぎには学校に着く生徒も多いことや、大学進学を希望する生徒が多いことから、このような措置を取った。
当初は、教員側から朝課外の廃止による学力低下を懸念する意見もあがったが、22年度の進路実績に影響はなく、再開を求める声は出ていないという。
「準備の時間」でも、教員は教室の見回りなどを行うが、1人で2クラスを受け持つことで負担軽減を図っている。宇都慎一朗教頭は「効率的に勉強時間を確保できているのではないか」と話す。
県立高16校は実施

朝課外は大学受験への対策として九州各県の「伝統」とされてきた。近年は主体的な学びの重視や、教員の働き方改革などを踏まえて、大分県や熊本県のすべての高校で廃止された。
鹿児島県教育委員会によると、県立高のうち、21年からの3年間で14校が朝課外を廃止したほか、武岡台高のように独自の取り組みを行う学校もある。松陽高も「朝活用」と名前を変えて自習時間を設定している。
昨年5月時点で朝課外を実施しているのは16校。進学校が多いが、生徒たちの意見は様々だ。
午前7時前のJR鹿児島中央駅。まだ薄暗い中、続々と朝課外に向かう高校生たちの姿があった。
県立高校に通う男子生徒(2年)は家が遠く、毎日午前5時半には起床しているという。「睡眠時間が削られるのは間違いなく、負担に感じるときもある」。一方で、別の男子生徒(同)は「朝課外がなければギリギリまで寝ているはず。勉強時間の確保につながっている」と理解を示した。
朝課外を行っている各校でも、科目を限定したり、回数を減らしたりするなど、近年、運用を見直しているケースも少なくない。
県教委は他県のように一律の廃止を求める予定はないとした上で、「生徒や教員の意向を十分に踏まえて判断するよう各学校に指導している」とした。

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