物資受け入れにトイレ管理…避難所運営の人手不足深刻化も 「役割分担の仕組み導入を」

能登半島地震で1万7千人近くの被災者が身を寄せる避難所で、運営の担い手不足が生じている。支援物資の受け入れにトイレの管理、感染症予防の呼びかけなど運営業務は多岐にわたり、避難生活が長期化すれば人手不足の深刻化も懸念される。専門家は「多くの避難者とともに役割分担する仕組みづくりが重要」と指摘する。
市職員も被災、急遽手助け
石川県輪島市河井町の指定避難所「市ふれあい健康センター」。激しい揺れで多くの家屋が倒壊した上、近くの観光名所「輪島朝市」も大火に見舞われ、想定を大きく上回る住民が避難した。
センターの入り口で8日、持ち込まれた支援物資を受け取る男性がいた。「今、水は大丈夫です」「大人用おむつはほしいです」と、在庫状況を頭に入れて手際よくやりとりする。
男性は、静岡県富士宮市のNPO法人「日本DMAT支援機構」副理事、山本真さん(51)。本来の任務は現地調査だったが、混乱する現場を前に6日から避難所の運営支援に入った。避難所運営を担うはずの現役世代や市職員らが被災し、十分な人員がそろわなかったからだ。
物資の仕分けやごみ箱の設置、食事提供の呼びかけ、仮設トイレの清掃、雪かき-。山本さんはあらゆる雑務を積極的にこなした。「支援物資として届けられた食事は、賞味期限が近いものから被災者に出すなど工夫が必要」と話す。
メモで状況整理
これに対し、珠洲(すず)市の市立正院小学校では、地震から間もなく、避難所の開設を担う地域の防災組織メンバーら約30人がそろった。避難所運営メンバーの小町康夫さん(69)が地震当日に書き留めたメモには、《名簿作成 確認とれた人485人》《トイレ設営外3カ所》《窓ふさぎ暖をとる》とあり、状況を整理しながら対応したことが見て取れる。
「防災訓練を毎年行い、相次ぐ災害に対応できたことが生きた」と小町さん。ただ、懸念は避難所運営を担ってきたメンバーの職場復帰だ。小町さんは「当初のメンバーが3分の1になってしまうため、運営に支障がないようにしないといけない」と説明する。
注意事項「新聞」で周知
阪神大震災をきっかけに発足し、多くの被災地でボランティア活動を展開してきた「被災地NGO協働センター」(神戸市)代表で関西学院大の頼政(よりまさ)良太助教は「特定の人に負担が偏らないよう、避難者全員で運営にあたるようにすべきだ」と指摘する。
実際、正院小の避難所では、ごみの片付け役を避難者の交代制にしたり、注意事項の掲示を「正院ひなん所新聞」として小学生らが作成したりするなど、避難者自身が運営に参加するよう対応し始めたという。
頼政氏は「避難所の役割分担は、現状を情報共有し、やってほしいことを投げかけることから始まる。エリアを分けてリーダーを決めてもいい」と提案。それでも人手不足が解消されない場合は外部のボランティアなどに頼るべきだとし、「避難所独自でのボランティア募集の情報発信も考えられる方法だ」と述べた。(藤谷茂樹、写真も)

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