「派閥がグループになるだけ」岸田首相 起死回生の〝派閥解散〟に冷ややかな声

政治資金パーティー収入の不記載問題で自民党が揺れる中、岸田文雄首相は18日、岸田派(宏池会)を解散させる意向を固めた。自派閥解散の大ナタを振るい、批判をかわす狙いで、他派閥にも揺さぶりをかけたが、何も変わらないとの見方が強い。
岸田首相は「政治の信頼回復に資するなら考えなければいけない」と宏池会の解散を決断した。宏池会は1957年に池田勇人元首相が立ち上げ、リベラル路線を敷き、大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一、岸田氏と5人の首相を輩出した名門。現在、40人を超える議員を抱える第4派閥となる。
裏金問題で岸田首相は政治刷新本部を発足し、連日会議を重ねている。無所属議員を中心に派閥解消が叫ばれ、この日は安倍派や二階派に続き、岸田派でも2020年までの3年間で約3000万円の不記載があったとして、東京地検特捜部が政治資金規正法違反の虚偽記載の疑いで当時の会計責任者を立件する方向であることが判明していた。
自民党関係者は「岸田派解散は岸田首相のイスにしがみつく執念を感じた。首相が自らの派閥を解散させるとなれば、他派閥も追随するところが出てくる。政権浮揚のための奇策ともいえる」と驚きの声を上げた。
ただ、本当に派閥はなくなるのか。最大派閥の安倍派は混乱が続き、幹部からは「解散も一つの選択肢」と解散もやむなしのところに追い込まれている。第2派閥の麻生派(志公会)は、領袖の麻生太郎元首相が派閥存続派の筆頭格で、第3派閥の茂木派(平成研)も派閥重視の考えで、徹底抗戦が予想される。
もっとも派閥がなくなったとしても看板が掛け代わるだけとの見方が強い。派閥を否定している立憲民主党は旧民主党時代から野田佳彦元首相や蓮舫氏が所属する「花斉会」、菅直人元首相の「国のかたち研究会」、泉健太代表率いる「新政権研究会」、小沢一郎氏の「一清会」などがグループで活動している。
自民党議員秘書は「立憲はグループで、掛け持ちが許される。サークル感覚で、緩やかとされるが、代表選などでは結束が求められることで自民党の派閥と変わりはない。人が集まればグループや派閥などの集団ができるのは当たり前。岸田派がなくなっても岸田グループになるだけで、やることは同じ」と指摘する。
旧民主党出身で二階派(志帥会)所属の長島昭久衆院議員はXに「誰よりも宏池会を大事にしてきた総理のこの決断に、他派閥も応える必要がある。ただし、これは『派閥解消』ではなく、政治団体の解散である。つまり、政策集団としてのグループ活動は継続するが、金輪際、政治団体としてパーティーはやらない、という決断だと思う」とポストした。
政治刷新本部は来週にも中間のとりまとめを発表する予定で、政治資金規正法の罰則強化のほかに目玉となる改革案を岸田首相は提示しなければいけないところだった。岸田派の解散は表面上、インパクトは大きく、窮地を取り繕うことになりそうだ。

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