東洋ゴムの免震偽装、旧経営陣4人に賠償命令 大阪地裁

東洋ゴム工業=現TOYO TIRE(トーヨータイヤ)、兵庫県伊丹市=で2015年に発覚した免震ゴムの性能偽装問題を巡り、株主が旧経営陣4人に計4億円の損害賠償を求めた株主代表訴訟の判決が26日、大阪地裁であった。谷村武則裁判長は、免震ゴムの出荷を停止して問題を公表する責任が旧経営陣にあったと認め、計約1億5800万円を会社に賠償するよう命じた。
賠償が命じられたのは、問題発覚時の社長だった山本卓司前社長のほか、ゴム製品の業務担当取締役▽品質保証担当の取締役兼常務執行役員▽コンプライアンス担当の代表取締役兼専務執行役員(肩書はいずれも当時)。
判決によると、旧経営陣は14年9月の会議で、免震ゴムの性能データ改ざんに関する対応を協議。いったんは出荷停止を決め、国にも報告するとしていたが、直後に撤回した。谷村裁判長は、4人のうちゴム製品担当と品質保証担当だった取締役2人について、地位や職務、知識、経験を踏まえて出荷停止を判断する義務があったと判断。その後に出荷された免震ゴムの交換費用約1億3800万円の支払いを2人に命じた。
さらに翌月の会議で、国土交通相の基準に適合しない免震ゴムがあることが明らかになっていたと指摘。国交省への報告や公表をする義務を怠って会社の信用を損ねたとして、4人全員に計2000万円の賠償責任を認めた。
判決後、原告の男性株主(82)の代理人を務める由良尚文弁護士は「経営陣に速やかな公表義務があったと認める画期的な判決だ」と述べた。会社側は「元取締役の責任が認められたことは会社として重く受け止めています」とコメントした。【安元久美子】
免震ゴムの性能偽装問題
性能データを改ざんし、国の基準を満たさない免震ゴムを東洋ゴム工業が製造・販売していた問題。同社が2015年3月に公表した。対象はマンションや自治体庁舎、病院など154棟に上り、免震ゴムの交換が進められた。実際にゴムを製造していた子会社が不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪で起訴され、罰金1000万円の判決を受けた。東洋ゴムはその後、産業用ゴム部門を事業譲渡。主力のタイヤ事業などに注力するとし、19年に社名を「TOYO TIRE(トーヨータイヤ)」に変更した。

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