ロレックスなどの高級腕時計を預けるだけで毎月お金が入る「トケマッチ」というサービスが突然終了。預けた腕時計がまだ返却されていないと、利用者から怒りの声が上がっています。
高級腕時計シェアサービスが突然終了「時計はおそらく返ってこない」
トケマッチに時計を預けた男性:「ロレックスのスポーツモデル。妻と初めて会ったときにも、実はその時計をつけていまして、決めた目標の達成のときに『いい時計を1本欲しいな』と思ったのがきっかけで、そのときに購入した時計になります」
男性が10年ほど前に、約60万円で購入した腕時計。一世一代、プロポーズの瞬間をともにした相棒です。子供が生まれてから身に着ける頻度が減ったといいます。
トケマッチに時計を預けた男性:「使わないで置いておくぐらいだったら、ちょっと有効活用できるんじゃないかなと思いまして、ちょっと預けることにしました」
男性が腕時計を預けたのは「トケマッチ」という高級時計シェアリングサービスです。
高級腕時計のオーナーが、トケマッチに時計を預け、トケマッチは預けられた時計を管理し、ユーザーにレンタル。オーナーにはトケマッチ側から毎月預託料が支払われます。預託料は、自分の時計がレンタルされたかどうかに関わらず、毎月振り込まれるといいます。
トケマッチに時計を預けた男性:「私の時計の場合は、月2万4900円入っていました。子どもの将来のお金ですね。その分で投資や貯蓄に回したりとか、そういう目的で」
“新しい形の腕時計ライフ”をうたっていたトケマッチですが、1月31日にサービス終了と、運営会社の解散を突然発表しました。
トケマッチに時計を預けた男性:「1月31日ですね。通常は入金されるはずなんですけども、入金がされない状態で。会社の方に対しては全く連絡がつかない状態なので、何も説明をせずに逃げるのは、卑怯なんじゃないのかなと。不誠実じゃないかな、というふうに強く感じます。おそらく時計は返ってこないとは思ってるんですね」
トケマッチ側はオーナーに6ヶ月を目安として時計を返却し、返却が難しい場合は、損害賠償するといいます。腕時計はいつ返却されるのか、運営会社に電話してみると…
喜入友浩キャスター:「繋がりませんね」
預けたはずの高級腕時計が“ネットオークション”に…
SNSなどで多くの人が声をあげている、トケマッチの問題。取材を進めると、新たな疑惑が浮上してきました。
都内に住む会社員の男性。トケマッチには15本、およそ2000万円分のロレックスを預けていました。
トケマッチに時計を預けた男性:「年末にかけて“どしどし応募(預託)してください”というキャンペーンをやっていて、追加で(腕時計を)購入して預けました」
2023年11月から「預託本数2000本目前」として大々的なキャンペーンをおこなっていたというトケマッチ。男性は11本のロレックスを新たに購入して預けましたが、その1か月後に、突如サービスが終了。アマゾンギフトももらえていない状況だといいます。
トケマッチに腕時計を預けた男性「非常に腹立たしいですね。騙されたという思いです」
――時計の所在はわかっているんですか?トケマッチに腕時計を預けた男性「ネットとかで検索をして、販売されている時計を確認していくと、一部自分の(時計の)シリアル番号のものが売られていることがわかった」
オークションサイトに売られていたロレックス。そこに書かれていた“シリアルナンバー”と自身が預けたロレックスの“シリアルナンバー”が一致したのだといいます。
トケマッチに腕時計を預けた男性「非常に残念な気持ちと、一方で『やっぱりか』という思いです。正直もう1本も返ってこないだろうと覚悟していたので、逆に喜びじゃないですけど、(オークションで)見つけられた、という気持ちでした」
また別のブランド品販売店でも、男性が預けた腕時計のシリアルナンバーと一致した時計が売られたことがわかったといいます。
――警察などへの相談は?トケマッチに腕時計を預けた男性「警察と一緒に店舗やオークションのほうにも連絡をして、現地に出向いて、事件の可能性があるので店舗にて保管して欲しいということで、(警察に)一緒に動いていただいています。トケマッチの方々には、一刻も早く返して欲しいと思います」
2021年に預けられた時計も翌年に売却か
実態を調べようと、自ら動き出した人もいます。時計バイヤーの北澤さん。預けた時計の一部がまだ戻ってきていません。北澤さんは、警察に捜査をしてもらいたいと、預けた腕時計が戻ってきていない人の集計作業をおこなっていました。
北澤さん「概算ではあるんですけど、人数で100名は超えています。私が把握しているだけでも今、10億円あります。許せないですね」
北澤さんは時計バイヤーとして業者間で利用されている取引サイトや、海外の売買サイトなどで預けた時計が売られていないかの確認もしています。
北澤さん「例えばこちらのシリアル(ナンバー)を検索すると、2021年に預けた時計が、なぜか2022年に売却されているんです。何本も売られているので、すぐに捜査していただきたいです」
私たちの取材では、他にもブランド品販売店でトケマッチに預けた腕時計と同じシリアルナンバーの時計が売られていたこともわかっています。こうした事実があるのか、トケマッチ側に聞きましたが、回答はありませんでした。この問題について、弁護士は…
エジソン法律事務所大達一賢弁護士「まず、“時計が返ってこない”というところが確定しているわけではないので、現時点において刑事上の問題が生じるという話ではないと思います。ただ今後の展開で、例えばかなり以前から、そもそもサービスを運営できるような状況でなかったにも関わらず、時計をかき集めていたという状況が明らかになった場合には、刑法上の詐欺罪が成立する余地というのも出てくるんじゃないかなと思います」
市場規模が拡大する「シェアビジネス」
喜入友浩キャスター:こうしたサービスがあったんだ、という驚きもありますが、トケマッチ側は預かっている時計に関して、「6ヶ月を目安に返却。返却が難しい場合は、損害賠償を支払う」としています。
こうしたビジネスを「シェアビジネス」と言いますが広がりを見せています。例えば民泊、服やカバンのレンタル、カーシェアなどもその一つです。
その市場規模は2022年度には2兆6158億円、10年後の2032年度には15兆1165億円となる予測になっています。
藤森祥平キャスター:皆さんもシェアリングサービスを何かしら利用した経験はあるでしょうか。
【「シェアリングサービス」を利用したことがありますか?】1005人回答2月7日午後11時5分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
▼利用したことがない:88.2%▼よく利用している:1.7%▼何度か利用した:6.9%▼「その他・わからない」…3.3%
ほとんどの方にはまだ広がっている感じではないですね。
小川彩佳キャスター:ただこのシェアリングサービス、業態様々ですが市場としては非常に盛り上がってきている、という中で、トラウデンさんは「カーシェアリング」をされているということで。
トラウデン直美さん:そうですね、カーシェアは本当によく利用していて、とても便利なので。便利だからこそ先々でもこれだけ拡大していくんじゃないか、ということだと思うんですけど、今回の「トケマッチ」のケースは、サービス自体と会社に心配な部分があるんじゃないかな、と思うので、そこは真相解明していただきたいな、と思う部分ではあります。
けれどシェアリングサービス全体として考えてみても、かなり普及はしてきていて、広がってきたのがまだ最近の話だと思うので、いろんなトラブルだったり、トラブルを予防する対策だったり、これからどんどんノウハウができていく部分だと思うので、その過渡期で、ちょこちょこ問題は出てしまうのかな、という気はしますね。
業界団体は「認証制度」取り入れるも…
喜入キャスター:シェアサービスの取引仲介業者の団体「シェアリングエコノミー協会」では対策として「認証制度」を設置しています。「認証制度」は、業者へのヒアリング、外部有識者による審議などで認証し、認証した企業には「認証マーク」を与え、問題のある取引を防ごう、というものです。
トケマッチは2023年6月8日にこの認証を取得していましたが、今回の件を受け、2月6日に認証取消となりました。その理由は大きく二つです。▼相談窓口が設置されていない、▼サービス停止・終了時、事前に利用者に通知されていない、この2点が基準に不適合として、認証取消となりました。
この認証制度というのは現時点で、財務的な審査を行っていません。ですからこの事業が継続できるかどうか、これを担保することが難しいという状況です。
今回の事態を受け、シェアリングエコノミー協会は「認証制度の審査手順や基準の検証を速やかに実施する」としています。
相手の顔が見えにくい取引なので、こういった制度の充実はもちろん、今回のトケマッチのケースだと「いち早く時計を戻して欲しい」。まずそれが第一かと思います。
小川キャスター:シンシアさんは、シェアリングサービスのトラブルについてどのようにお感じですか。
薄井シンシアさん:私はどちらかというと、すごく慎重な人なのでシェアリングエコノミーは使うんだけれども、企業はすごく選びます。
要するに、ネットの普及のおかげで、ビジネスを立ち上げるのがすごく簡単になりました。それは一つのメリットなんですよね。ウェブサイトがあれば、だれでもビジネスができる。逆に簡単にできるからこそ、ユーザーの方は取引先、使うサービスを、本当に慎重になって使うべきだと思いますね。
小川キャスター:簡単に便利できるからこそ、心理的なハードルもぐっと下がってしまっているところはありますよね。
藤森キャスター:整備が追いついているところと、まだまだ届いてないところがある。
小川キャスター:リスクがあるというところも認識しながら利用していく、ということになるんでしょうかね。
※動画内で紹介したアンケートは8日午前8時で終了