さいたま市議会は7日の2月定例会本会議で、同日提出されたインターネット上の 誹謗 中傷防止・被害者支援条例案を賛成多数で可決した。4月1日の施行を予定している。こうした条例は昨年12月に戸田市も制定しているが、さいたま市議会局によると、政令市では全国で第1号となった。
成立した条例は、人の権利を侵害したり、著しい心理的負担などを強いたりする情報のネット発信が誹謗中傷にあたると規定。被害者に専門家を紹介するなどの支援体制の整備や、自分で発信したり拡散させたりした内容に不安があるという人からの相談に乗るよう、市に求めている。自分が加害者にならないよう、市民もネットリテラシー(適切に使う能力)向上に努めるなどとした。罰則規定はない。
2020年に女子プロレスラー・木村花さん(当時22歳)がSNSで中傷され、その後自殺した問題などを受け、市議会では全会派の12人が昨年6月にプロジェクトチーム(PT)をつくり、今回の条例案を策定、提出した。
PTは約8か月にわたり、ネット上の誹謗中傷に関する調査を実施。小中学生や高校生にも話を聞き、スクールカウンセラーにもアンケートを行うなどした。条例案の素案に対する一般の意見も募集し、30件以上が寄せられた。意見を踏まえ、障害や性的指向といった理由での侮辱も「差別的言動」として誹謗中傷に該当するなどと、定義を明確にした。
議長を除く59人で行われた採決では賛成が58人、反対が1人だった。PTの会長を務めた神坂達成議員(公明)は取材に、「(条例を)作ったら終わりではなく、PTのメンバー全員で責任を持って(市の対応などを)見守りたい」と述べた。