客が従業員らに理不尽な言動を行う「カスタマーハラスメント」(カスハラ)を巡り、東京都が全国初となる防止条例の検討を始めた。最近は、全日本空輸が搭乗を拒む迷惑行為の明示を検討し始めるなど、複数の業界が対策に乗り出している。暴力を振るったり、業務に支障をきたすほどの嫌がらせ電話をしたりするなど、犯罪ともとれる行為も際立っており、〝泣き寝入り〟を防ぐための対策が進んでいる。
カスハラは、従業員に対して暴力や暴言を振るったり、些細なミスで「いますぐ来い」と呼び出したりするなど、客側の理不尽な要求や言動をさす。過去には、全日空の従業員に「手数料なしで解約しろ」と電話越しに迫った例や、空港係員に「死ね」「能なし」といった暴言を繰り返した例などが報告された。
国土交通省によると、鉄道の駅の改札口で、乗客がタッチ型のICカードを自動改札機の切符投入口に入れようとしてトラブルになった例もある。駅員が読み取り部分にタッチするよう促したが、改札口を出たところで突然怒りだし、駅員に暴力を振るったという。
カスハラは、行政機関でも目立っている。大阪府では、職員に「お前らは愚能」、「死んでも許しません」などと700回以上電話をかけてきた女性に対し、大阪地裁が電話や大声を出すなどの行為を一切禁じる命令を出すよう求めた府の訴えを、全面的に認める判決を出した。
危機管理コンサルティング業「エス・ピー・ネットワーク」(東京)の昨年の調査によると、クレーム対応をしたことがある営業・販売、一般事務、カスタマーサポートといった職種の20~60代のうち、64・5%が直近1年間にカスハラを受けたと回答した。カスハラをする世代は、40~60代が合計8割を占めた。「男性からカスハラを受ける方が多かった」との回答も約8割を占めた。(村田幸子)