【学校と第三者委が会見】高校2年生いじめ苦に自殺 「入学直後から剣道部内でいじめ行為」「寮の運営にも問題」

2021年に部活動の先輩や顧問などからのいじめ被害を訴える遺書を残して東海大福岡高校の当時2年生だった男子生徒が自殺した問題で、第三者調査委員会が調査結果を発表した。学校側は20日午後3時から会見を開いた。
◆男子生徒 剣道部内でのいじめ被害訴える遺書
2021年3月、当時2年生だった男子生徒は、所属していた剣道部内でのいじめや、男性顧問への不満などを記した遺書を残して自殺した。3か月後には、学校側がいじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」に認定、第三者委員会を設置して調査を開始した。
◆学校側の冒頭発言要旨
20日午後3時から行われている記者会見には、東海大福岡高校の校長や教頭のほか、第三者委員会から弁護士や大学教授らが出席した。
東海大福岡 津山憲司校長
「原因を究明していく中で、入学当初から6月中旬にかけて、所属する剣道部内でいじめ行為が判明しました。御冥福を心よりお祈りするとともに、ご遺族関係者に深くお詫びします。
第三者委員会からも剣道部内でのいじめ行為が男子生徒の自殺の一員になったと認定されています。また、剣道部顧問がいじめ行為を把握していながら、部内で解決を図る指導に終始し、学校への報告がなされていなかったことから、学校として適切な対応に至らなかった点も指摘されています」
◆第三者調査委員会の報告書と会見要旨
会見では、宇加治恭子委員長(福岡県弁護士会弁護士)が調査の経緯と報告書の内容を説明した。以下、会見要旨。
第三者調査委員会は、男子生徒が自殺したことについて、直接的な原因の特定には至らなかったが、剣道部内においてあってはならない悪質ないじめがあって、剣道部や寮の運営にも大きな問題があったことが男子生徒の自殺の一因になった。生徒が自殺した後の、遺族への学校側の対応も十分ではなかった。
東海大福岡高校は、部活動の強化を図ることによって学校の存在価値を高めることにしていると認識しているが、そうであれば、昔ながらの旧態然とした部活動指導に安住してはならない。
◆第三者調査委員会が認定した10件のいじめ
男子生徒は、入学後まもなくけがをした。そのころから剣道部内での上級生によるいじめがひどくなった。第三者調査委員会は、上級生から行われた10件を「いじめ」と認定した。
認定されたいじめは
・アダルトグッズを無理やり肛門に入れられそうになった
・体を畳にガムテープで貼り付けられ、下着を下ろされて陰部を手淫された
・上記の様子を撮影した動画をLINEでほかの生徒に送信した。
・剣道着を貸したのに返してくれない
・スマートフォンのゲームアプリを削除された
・スマートフォンに先輩の指紋認証された
・LINEに登録されている女子にメッセージを送信された
・スポンジ製のバットで何度も叩かれた
・肩などを殴打された
・ガムテープで顔をぐるぐる巻きにされインスタグラムのストーリーに投稿された
福岡地検によると、2021年11月22日、いじめをした上級生の1人(当時19歳の男性)は、強制わいせつ容疑で家裁に送致されている。
◆第三者調査委員会が問題を指摘した寮の運営
男子生徒は、推薦入学で高校に入学し、剣道男子部員の寮に入ることになった。寮は、顧問の父親が自分で建てて運営するもので、学校がつくった寮ではない。学校の剣道部の寮ではあるが、高校側は運営にほとんどかかわっていなかった。入寮や退寮、再入寮の判断や可否に、高校はいっさいかかわっていなかった。男子生徒は、いじめ被害を訴え退寮したが、いじめをした上級生が卒業するタイミングで、再入寮を希望した。しかし、顧問が再入寮を拒否した。第三者調査委員会としては、このころ、男子生徒本人が一番きつかったころだと認識している。遺書にも記載があった。寮での生活面は、寮長と言われる部員がほかの生徒を指導する体制になっていた。高校として生活をみていくことはなかった。学校として「剣道部の寮です」と紹介していたにも関わらず、学校は関与できていなかった。この状態はよくない。男子生徒にとって、学校の部活環境は厳しいものになった。剣道部内のトラブルが寮に波及することは想像つくが、配慮されていなかった。学校として関与していくべきではないか。
◆顧問の男性は、現在も顧問として指導を継続
学校によると、顧問は専任教諭で、現在も顧問を続けている。校長は「独善的な指導はあったが、懲戒処分に値するようなものはなかったので、現在も顧問を継続している。男子生徒が3月に亡くなったあと、4月に厳重注意をして指導に戻した。顧問のミスは、学校に報告しなかったこと。ただ、顧問が男子生徒や部員にパワハラ指導や暴言暴力は確認されていない。部活動を指導するに値すると思っている。剣道部の寮は、顧問の父親が建てた寮を継続して使用している。現在も顧問の父親が運営している」などと説明した。
◆男子生徒の遺族のコメント
第三者委員会の報告書について、遺族としては、一定のいじめの事実が認定されたこと、顧問の対応や剣道部の在り方について問題点が指摘されたことについては、評価しています。
もっとも、侑大は、いじめやこれに対する顧問の不適切な対応、被害者である侑大が退寮を余儀なくされたこと、再入寮が拒否されたこと、不適切な課題が課されたことにより、大好きな剣道を続けることが出来なくなっていきました。侑大は、剣道が本当に好きだったので、自分らしい剣道が出来なくなっていくことはとても辛いことだったと思います。第三者委員会は、この侑大の気持ちに丁寧に寄り添ってくれることなく、自死の直接的な原因はわからないと判断しており、この点をとても残念に思っています。 再調査委員会では、侑大の置かれた状況、これによる侑大の心理過程を丁寧に検討していただき、自死の原因を明らかにしていただきたいと希望しています。
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