北朝鮮による拉致被害者家族会などは4日の岸田文雄首相との面会で、先月公表した今年の運動方針に込めた思いを訴えた。対北制裁の「解除」に初めて言及したが、あくまで「全拉致被害者の即時一括帰国の実現」が前提。北朝鮮のこのところの融和的な発信もあり、国内では日朝関係の早急な改善を期待する向きもある中、「政府は決してハードルを下げることなく、怒りの気持ちを持って外交に当たってほしい」と求めた。
「(北朝鮮に対し)個人的には怒りや敵対心しかない中で、拳を少しだけ下げて、方針に込めた。この心の苦しさを、岸田総理には分かってもらえたと思う」。横田めぐみさん(59)=拉致当時(13)=の弟で家族会代表の拓也さん(55)は面会終了後、報道陣の取材にそう手応えを口にした。
家族会などは2月、新たな運動方針として、親世代が存命中の全拉致被害者の即時一括帰国を条件に、対北独自制裁の解除に「反対しない」と表明。めぐみさんの母、早紀江さん(88)ら高齢家族の健康に懸念があり、新方針が一刻も早い事態進展に寄与すればとの思いがある。
早紀江さんは岸田氏に対し、「今度は必ず全員を帰らせてほしい。それだけをお伝えした」。田口八重子さん(68)=同(22)=の長男、飯塚耕一郎さん(47)は「今は(日朝関係の)変換点が来ているとも考えられるが、一喜一憂せず冷静に対処してほしい」と求めた。