文化審議会(佐藤信会長)は15日、平安時代に編さんされた詩歌集「和漢朗詠集(雲紙)」や大型の埴輪(はにわ)船などで構成される「三重県宝塚一号墳出土埴輪」(三重県松阪市)など6件について、国宝に指定するよう文部科学相に答申した。
祇園祭などの様子を描いたびょうぶ「紙本金地著色日吉山王・祇園祭礼図」など36件は重要文化財に指定するよう答申した。近く答申通り告示され、美術工芸品の重要文化財は1万910件(うち国宝912件)となる。
和漢朗詠集は平安時代中期の歌人・藤原公任が漢詩の秀句と和歌をまとめた詩歌集。上下2巻が完全な形でそろっており、国文学史や書道史上、極めて貴重とされた。
宝塚一号墳は古墳時代中期の前方後円墳で、船や家などの埴輪が多数出土した。中でも埴輪船は全長140センチと大きく保存状態も良好で、古墳時代の大型船の姿をよく表していると評価された。
このほか国宝への指定が答申されたのは、鎌倉時代に作られた彫像「木造六観音菩薩像・木造地蔵菩薩立像」(京都市)や奈良時代の石碑「多賀城碑」(宮城県多賀城市)など。
紙本金地著色日吉山王・祇園祭礼図は、右側に日吉大社(大津市)の山王祭、左側に祇園祭が描かれ、二つの祭礼をテーマとしたびょうぶとしては現存する中で最古。近世初期風俗画につながるものとして重要とされた。
また、岩宿遺跡(群馬県みどり市)を発見した考古学者の相沢忠洋氏(1926~89年)が収集した石器などについて、登録有形文化財に登録することも求めた。
[時事通信社]