札幌高裁「同性婚も婚姻自由」踏み込む…喜びの原告、涙ながらに「家族として生きていいんだ」

憲法は同性同士の婚姻の自由も保障している――。同性婚を巡る一連の訴訟で初めて控訴審の判断を示した14日の札幌高裁判決(斎藤清文裁判長)はそう述べて、異性間での結婚しか認めていない現行の制度は憲法の趣旨に反すると断じた。同じく「違憲」と判断した1審・札幌地裁判決よりも大きく踏み込んだ内容に、当事者らは「待ち望んだ判決だ」と喜びの声を上げた。
「この国で家族として生きていいんだと励まされる判決だった」。札幌市内で判決後に開かれた記者会見で、原告の会社員中谷 衣里 さん(32)は涙で声を詰まらせながらも笑顔を見せた。
訴訟では、婚姻は異性間で行うものとしている民法や戸籍法の規定が▽「婚姻の自由」を定めた憲法24条1項▽「婚姻などの事項に関し、法律は個人の尊厳と両性の平等に立脚して制定する」とする同条2項▽「法の下の平等」を保障する憲法14条1項――に反するかが主な争点となっている。2021年3月の地裁判決は憲法14条1項に反するとしか認めなかった。
しかし、この日の判決は性的少数者への社会的な理解が進んでいる状況などを踏まえ、規定は24条1項と2項にも反するとした。損害賠償請求は棄却したものの、「同性婚を可能としても不利益や弊害の発生はうかがえない」として、法整備を求める原告側の訴えに理解を示した。
30歳代の女性会社員とパートナーとなり、今年で16年を迎える中谷さんは、札幌訴訟の原告3組でただ一人、実名と顔を公表している。19年の提訴時は匿名だったが、控訴審に入ってから「裁判を起こしているのは『ごく普通の一般人』だと知ってほしい」との思いが募り、公表を決意した。
今は両親も裁判を応援しているが、「人生の半分は関係が破綻していた」と明かす。16歳で同性愛者だと打ち明けた時、母は涙を流して嘆き、パートナーのことを何度も説明しようとしても、両親は耳を傾けてくれなかった。
「雪どけ」の契機はこの裁判だった。提訴から3か月後、裁判の意義を説明し、「私のセクシャリティー(性的指向)を『無いもの』にしないで」と訴えた。両親は硬い表情で聞くばかりだったが、しばらくして母親から自身とパートナーに届いた手紙には、謝罪と激励の言葉がつづられていた。
法改正が実現して同性婚が認められれば、自分たちだけでなく、互いの両親も「家族」になれる。中谷さんは「高裁判決で大きな一歩を踏み出せる」と目を真っ赤にして語った。

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