「特定失踪者」の家族、政府制作のビデオメッセージに初めて出演

北朝鮮に拉致された可能性がある「特定失踪者」の大沢孝司さん(行方不明時27歳)=新潟市西蒲区=の兄、大沢昭一さん(88)が、帰国を願い孝司さんとの思い出などを語ったビデオメッセージが4月以降、内閣官房拉致問題対策本部のホームページで公開されることが、昭一さんらへの取材で分かった。政府の認定に至っていない特定失踪者のビデオメッセージは初。昭一さんは「これまで拉致認定された家族だけが紹介されていたが、一歩ずつ変わり、帰国に向け動き出した」と期待を寄せる。
県職員だった孝司さんは1974年2月24日、赴任先の旧新穂村(現佐渡市)で行方不明となった。2002年9月の日朝首脳会談で北朝鮮は、佐渡市で失踪した当時19歳の曽我ひとみさん(64)を含めた日本人拉致を認めた。昭一さんは以来、政府に孝司さんの拉致認定を求めて活動してきた。
同本部事務局の担当者は「特定失踪者がいる事実が十分に国民に伝わっていない」とし、政府が認定する曽我さんたちだけでなく、特定失踪者についても広く周知する目的で制作を決めたという。昭一さんと、青森県弘前市で行方不明となった今井裕さん(行方不明時18歳)の兄で「特定失踪者家族会」の今井英輝会長が出演するビデオメッセージがそれぞれ公開される予定。
孝司さんの失踪から先月で50年が経過した。昭一さんは同月、孝司さんと幼少期を過ごした実家のいろりを囲みながら思い出を語り、孝司さんに向けたメッセージの撮影を終えた。昭一さんは「政府には、今後の北朝鮮との交渉に特定失踪者も含めてほしい」と訴える。【内田帆ノ佳】

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