「遺骨が団体に渡れば『重大犯罪に…』」麻原彰晃の遺骨を次女に引き渡す判決に国が反発したのは、公安調査庁の“メンツ”が理由?

教祖の遺骨を巡り娘と国の争いが続くことになった。
地下鉄サリン事件などで日本を震撼させ、死刑に処されたオウム真理教元代表の松本智津夫(麻原彰晃)の遺骨などを麻原の次女が自身に引き渡すよう国に求めた裁判。次女の訴えを認めた東京地裁の判決を不服として、国が18日、控訴した。
「麻原の遺骨は存命中に面会に訪れるなどしていた次女が受け取ることになったのですが、国は『後継団体に悪用される可能性がある』などといって引き渡すことを安全上の懸念から拒否。そこで次女が東京地裁に訴え、13日に引き渡しを命じる判決が下されていました」(司法担当記者)
「アレフなどに悪用される懸念が拭えないとして交渉が決裂」
死刑が執行されたのは2018年7月6日。麻原は遺骨と化したが、ここでトラブルが勃発する。死刑を執行した法務当局が保管する遺骨を誰が受け取るか、麻原の家族の間で裁判沙汰になったのだ。
「国は死刑の執行直前、『麻原元死刑囚が四女に遺骨を渡すよう求めた』として、オウム真理教の流れを汲む『アレフ』などと距離を置く四女に渡そうとしましたが、次女や麻原の妻らが遺骨を求める要求書を提出。最終的に次女を所有権者とする決定が21年に最高裁で確定しました」(同前)
判決確定時点で国が遺骨を引き渡す予定となり、実際、国と次女の間で引き渡しの交渉が始まった。
「国は当初は引き渡しを覚悟していましたが、『弔うため』という次女が遺骨を保管するのか明らかにせず、アレフなどに悪用される懸念が拭えないとして交渉が決裂しました」(同前)
「オウム関連団体を監視対象とする公安調査庁の意地だろう」
公安関係者は「遺体や遺骨はテロ集団にとって重要なアイテム。01年の米同時多発テロ事件の首謀者ウサマ・ビンラディン容疑者を米軍が殺害した際にも、崇拝の対象とならないよう遺体は海に沈められた。引き渡しを拒む理屈は理解できる」と話す。
ビンラディンを意識してか、今回の訴訟での国の主張は実におどろおどろしい。
「国はアレフなどが『無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認められる団体』だとし、遺骨が次女を通じて団体に渡れば『重大犯罪につながる』と主張した。ただ、次女が遺骨を所有する権利を最高裁が認めている以上、法的には無理筋。地裁判決は『重大犯罪につながると裏付ける証拠はない』と国の主張をにべもなくはねつけた」(同前)
ここまで引き渡しを拒むのはなぜか。
「オウム関連団体を監視対象とする公安調査庁の意地だろう。他のインテリジェンス機関から一等下に見られている公調にとってオウムは聖域。公調存続のためにも関連団体は危険でなければならない」(警察関係者)
メンツをかけた訴訟は東京高裁に移る。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年4月4日号)

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