「つばさの党」代表らの選挙妨害、警視庁「極めて悪質」と判断…乙武陣営「食い止めは今しかない」

4月の衆院東京15区(江東区)補欠選挙を巡る選挙妨害事件は17日、候補を擁立した政治団体代表らが公職選挙法違反容疑で警視庁に逮捕されるという異例の展開となった。「前代未聞の妨害」との声も上がった「つばさの党」の選挙活動。被害を受けた他の陣営関係者からは、再発防止を訴える声が上がった。

「民主主義の根幹を揺るがす重大な選挙妨害と判断した。さらに過激化する恐れもあった」。強制捜査から4日後に、つばさの党代表の黒川敦彦容疑者(45)ら3人の逮捕に踏み切った理由を捜査幹部はこう説明した。
同団体陣営は告示日の4月16日から拡声機を使い、他陣営の演説を妨げるなどの行為を繰り返した。公職選挙法は225条で、街頭演説を妨げる行為を「自由妨害罪」と規定している。
選挙後、複数の陣営から被害届の提出を受けた警視庁は、「極めて悪質」と判断し、今月13日、団体本部事務所など3か所を捜索。陣営関係者らからの事情聴取を進めていた。
黒川容疑者らは13日、報道陣に「法律の範囲内」の活動だったと強調。今後も同様の行為を続ける方針を示していた。

無所属で立候補した作家の乙武洋匡氏(48)は、告示日から、「標的」となった。黒川容疑者らは、電話ボックスによじ登るなどして、「どのつらさげて立候補しているんだ」などとマイクでまくし立てた。
逮捕を受け、乙武氏の陣営幹部は「模倣犯が生まれる可能性もあり、食い止められるのは今しかない」と話した。乙武氏はX(旧ツイッター)に「法律ギリギリの範囲を狙って選挙を荒らしまくり、有権者の“聞く権利”を奪う悪質な行為が、今後二度と繰り返されないよう切に願っています」と投稿した。
当選した立憲民主党の酒井菜摘氏(37)の陣営幹部は「こんなに逮捕が早いとは思わなかった。警察が迅速に対応してくれてよかった」と話した。
日本維新の会の金沢結衣氏(33)の陣営関係者は「あんなにも激しい妨害は前代未聞。候補者がお互いを尊重してきたこれまでの選挙活動が破壊された」と憤りをあらわにした。
林官房長官は17日午前の記者会見で、「選挙運動を妨害することはあってはならない。ルールを順守し、公正、適切に選挙運動を展開する必要がある」と強調した。

7月に都知事選を控える東京都選挙管理委員会は、今回の事件を受け、街頭演説のルールなどを記したチラシを作成した。公式SNSに掲載したほか、都知事選の立候補予定者説明会などで配布するという。
チラシでは、「演説の継続や聴取を困難とする妨害」などを例に挙げ、公選法に抵触する恐れがあると指摘。街頭演説をできる時間帯など、演説の際に守るべきルールも記載した。
都選管には選挙期間中、有権者らからつばさの党の活動について苦情などが少なくとも183件あった。担当者は「都外からも電話が来た。特定の陣営の活動に、これだけ多くの問い合わせが来るのは珍しい」と話した。

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