「中にまだ4人残っている」――。いつもは閑静な山あいの集落に、悲痛な叫び声が響いた。山形県大江町で23日未明に発生した住宅火災。屋根が崩れ落ち、木造の柱や骨組みが一部むき出しとなった火災現場から、4人の遺体が見つかった。炎はあっと言う間に燃え広がり、駆けつけた消防団長は「必死で消火したが……」と無念そうに語った。
出火したのは、大江町楢山、農業鈴木良勝さん(56)方の木造2階住宅。鈴木さんは、80歳代の母、50歳代の妻、20歳代の息子2人との5人暮らし。妻は近所の人に救助されて無事だったが、他の4人とは連絡が取れていない。寒河江署は、遺体は家族4人とみて身元の確認を進めている。
23日午前0時40分頃、近所の住民から「爆発音が複数回ある。炎が大きくてどこから燃えているかわからない」などと119番があった。
近くに住む男性(66)は同じ頃、「ボーン、ボーン」という爆発音を聞いた。家の外に出て鈴木さん方を見ると、「赤い炎が1階から縦に立ち上って、バリバリという音が聞こえた」という。
鈴木さんの妻は、住宅2階から近隣住民たちに救助された。近くの50歳代の女性会社員は「息子が、『助けて』という鈴木さんの奥さんの叫びを聞き、近所の人と協力して玄関の上にはしごをかけ、奥さんを救助した」とその様子を説明した。
鈴木さんの妻は「中に4人残っている。助けに戻りたい」と泣き叫んでおり、周りの人たちが止めたという。
近くの男性会社員(62)は23日午前1時頃に、自宅2階から現場の方を見て「煙がまっすぐ立ち上り、オレンジ色の炎が見えた。家の外に出たら、泣きじゃくる奥さんの声が聞こえた」とやり切れない様子だった。
消火活動をした大江町消防団の林善昭団長(50)は「必死で消火したが、火の勢いが強かった」と硬い表情で振り返った。
寒河江署などは、午前9時半頃から実況見分を開始。焼失面積や火元などを調べた。24日も実況見分を行う予定。