職業差別と受け取れる発言をきっかけに4期目途中で辞職した川勝平太氏の後任を決める静岡県知事選は26日の投開票の結果、野党が推した前浜松市長の鈴木康友さん(66)が与野党対決を制した。混迷が続く中での15年ぶりの新知事誕生に、有権者からは「県民目線での政治を」との声があがっている。
「これまでの経験や知見、人脈を全て注ぎ込んで、県政の発展に全力を尽くす」。鈴木さんは26日深夜、当選確実の報を受けて静岡市内のホテルに姿を見せ、支援者らを前に力強く語った。
鈴木さんは昨年4月まで4期務めた浜松市長時代、1300億円以上の市債を削減した手腕などが評価され、数年前から知事候補と目されていた。松下政経塾出身で旧民主党の衆院議員も2期務めており、政界にも人脈が広い。
選挙戦では立憲民主党が「次期衆院選の前哨戦」と位置づけ、告示日から野田佳彦元首相が浜松入りするなどして全面支援。泉健太代表や国民民主党の玉木雄一郎代表も駆けつけたほか、連合も応援に回った。川勝氏が4選を果たした3年前と同じ支援体制となった。
陣営が悩んだのは失言があった川勝氏との距離感。鈴木さんは川勝氏と親しいものの、選挙戦ではそれを強調せず「オール静岡」を前面に出した。陣営幹部は「川勝氏の直系と見られるのは避けたかった」と語る。
一方、自民党が推した元副知事の大村慎一さん(60)は「全ては私の不徳の致すところだ。力が及ばなかった」と述べた。陣営は幅広い支援を集めようと「オール静岡」を掲げたが、党への逆風に最後まで苦しめられた。立候補表明後、浜松を地盤にする塩谷立元文部科学相が派閥パーティー券の収入不記載問題を受けて離党。前防衛副大臣の宮沢博行氏も女性との不適切な関係で辞職し、党への不信感が広がった。
川勝氏は多くの失言で物議を醸し、県議会が辞職勧告決議を可決するなど県政では混迷が続く。リニア中央新幹線静岡工区の行方も不透明のままとなっている。
新知事に対する県民の期待は大きい。静岡市葵区の70歳代の無職男性は「前知事は不適切発言など、本題ではない議論ばかりだった。生活に密着した政策を進めてほしい」と注文。伊豆の国市の会社役員の男性(55)も「県民目線で県内全域に目を配り、地に足をつけて実務にしっかり取り組んで」と期待を込めた。