7月にある京都・祇園祭の山鉾(やまほこ)巡行で、飲食を楽しみながら見学できる「プレミアム観覧席」を巡り、祭を執り行う八坂神社(京都市東山区)の野村明義宮司(65)が異議を唱えている。巡行は神事であるとして、飲食を提供して観覧させることに疑問を呈しているという。野村宮司は、観覧席を販売する京都市観光協会の理事を辞任する意向を協会に伝えた。
インバウンド(訪日外国人)需要が好調な中、京都を代表する祭りを巡り、観光と伝統を両立させる課題の一端が浮かんだ。
プレミアム観覧席は外国人観光客の利用を見込んで2023年に初めて設けられ、24年も6月11日に販売が始まった。7月17日の「前祭(さきまつり)」で、山鉾が方向転換する見せ場の「辻(つじ)回し」を間近で見られるよう、河原町御池交差点(中京区)の角に60席を用意。座椅子を用いた和風のしつらえで日よけのパラソルを設け、日本酒などの飲み物やかき氷を提供する。23年は1席40万円で84席を販売し、65席が売れた。24年は15万円に価格を下げ、日本人客の利用も狙う。
八坂神社によると、野村宮司は飲酒や食事が伴う観覧形式について、23年から疑問を感じており、「山鉾巡行も神事であり、(巡行に携わる)奉仕者に対して失礼ではないか」と話しているという。野村宮司は13日、毎日新聞の取材に対し、コメントしなかった。
市観光協会によると、6日にあった神社との打ち合わせで、辞任の意向を伝えられたという。担当者は取材に「山鉾巡行をショーのように見せたいわけではなく、日本の伝統文化をよりじっくり見ていただきたいという趣旨だ」とコメントした。今後、野村宮司の意向を確認するという。【南陽子、大東祐紀】