大阪地検特捜部が初の司法取引 奈良・御所市議の汚職事件で

大阪地検特捜部が捜査した奈良県御所(ごせ)市発注の火葬場新設工事を巡る汚職事件で、捜査に協力した容疑者らの刑事処分を減免する司法取引(合意制度)が適用されていたことが判明した。この事件では元御所市議が現金7500万円を受け取ったとする加重収賄罪で逮捕、起訴された。特捜部は取引で得た証拠を生かし、事件の解明につなげたとみられる。
東京地検特捜部以外の検察による捜査で、司法取引の実施が明らかになるのは初めて。
起訴状によると、元市議の小松久展(ひさのぶ)被告(71)は現職だった2020年7月の市議会で、御所市の建設会社を代表とする企業グループが工事を受注する事前合意があるのを知りながら、工事請負に関する議案に賛成。21年、建設会社幹部だった2人=贈賄罪で有罪確定=から現金計7500万円を謝礼として受け取ったとされる。
小松被告の公判が20日に大阪地裁であり、企業グループの受注に協力したとされるコンサル会社員が証人出廷した。検察側は22年6月15日付で司法取引が成立したことを示す「合意内容書面」を明らかにした。小松被告はこの約4カ月後に起訴された。
公判での尋問などによると、工事受注を目指した企業グループ側は小松被告や社員に協力を依頼した。コンサル会社は市の関連業務を請け負うことになり、社員が入手した未公開の入札情報などを企業グループ側に提供。さらに社員と小松被告はそれぞれ市側に働きかけ、入札の参加要件を企業グループにとって有利になるよう変更させたという。
特捜部はこの社員から得た情報を踏まえ、企業グループが受注した経緯や小松被告の関与などについて捜査を進めたとされる。社員は工事の入札を妨害した疑いが持たれたが、司法取引に伴い立件されなかった。
一方、小松被告は4月23日に大阪地裁であった初公判で「賄賂ではない」と否認。弁護側は「関係者の供述は仕立て上げられたものだ」と主張し、違法な捜査だったとして裁判を打ち切る「公訴棄却」を求めた。
司法取引は18年に導入された。容疑者や被告が他人の犯罪を明らかにするのと引き換えに、検察官は起訴を見送ったり、求刑を軽くしたりできる。これまでに東京地検特捜部が捜査した3件、兵庫県警では1件で適用が判明している。【高良駿輔】

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