東京都知事選が20日告示された。現職の小池百合子知事と前参院議員の蓮舫氏の事実上の一騎打ちとの見方もある。立候補者は50人以上出て、中にはユニークな人もいるが、両氏とは差がある情勢のようだ。
政策以前に、小池氏には「学歴問題」、蓮舫氏には「国籍問題」がある。
前者は毎度話題になり今回も元側近により刑事告発されたが、最終的な判定権者であるカイロ大学が卒業を認めている以上、ロジカルには経歴詐称は成立しない。筆者も大学教員であるが、学内の卒業判定会議は基本的に指導教官の判断だ。
一方、後者は過去の話だが法務大臣が、一般論として「違法状態」との見解を示したこともある。どっちもどっちであるが、都民はよりマシなほうを選ばないといけない。
政策では、小池氏は主な公約として、調整池の整備による水害対策▽シェルター整備でミサイル危機に対応▽富士山噴火を想定した降灰対策▽女性活躍基本条例の制定▽年収の壁を越える取り組みの加速▽無痛分娩費用に対する助成制度の新設▽保育料無償化拡大▽都独自の認知症専門病院創設―などを掲げている。
現職知事の強みであり、現行の都政の継続とともに具体的な新規策を出している。都知事は予算などで大きな権限をもっているが、実は行政としては、広域行政、基礎自治体調整、インフラ整備、危機対応などを受け持ち、生活周りの教育や福祉は(市町村など)基礎自治体、外交・国防は国という役割分担がある。小池氏の公約は今の都行政をベースにしているので、逸脱はなく安心感がある。
一方、蓮舫氏の主な公約は、奨学金返済支援▽住民税非課税世帯への家賃補助▽パートナーシップ宣誓制度の利便性向上▽東京版・行政事業レビューシート導入でガラス張りの都政実現▽公金や補助金の支払先の原則公開▽都が保有する情報をオープンデータ化▽知事直轄の円卓会議設置によるボトムアップ政治▽神宮外苑再開発の見直し―などである。
これらは、行政のやり方に関するものが多く、やや具体性を欠いている。
しかし、神宮外苑再開発という具体策で、小池氏と蓮舫氏は真っ向から対立する。小池氏はこれまでの手順決定で、「立憲民主党も了承した」とするなどその正当性を主張するが、蓮舫氏は開発主体への都職員の天下りなどを問題視して撤回を求めるだろう。
小池氏を支援するのは、自民党、公明党、都民ファーストの会などだ。一方、蓮舫氏を支援するのは立憲民主党や共産党などだ。形式的には国政での与野党対決であるが、今のところ選挙情勢は小池氏が優勢のようだ。最近人気に陰りが出ているといってもさすがだ。
しかも都知事選は、現職が立候補して落選したことがない現職有利の選挙だ。「与野党対決」とはやし立てても、選挙情勢が拮抗(きっこう)しないと盛り上がらない。だが、このままでは〝見せ場〟がないまま選挙戦が進むような気がする。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)