新型コロナウイルス感染症治療用の細胞製剤をヒトES細胞(胚性幹細胞)から作ることに成功し、今月に特許出願した、と京都大医生物学研究所などの研究グループが発表した。重症化した患者への使用を想定し、早ければ5年後の実用化を見込んでいるとしている。
既存のコロナ治療薬には、ウイルスが体内のタンパク質に結合するのを阻害する抗体薬や、ウイルス増殖を防ぐ抗ウイルス薬がある。これに対し、今回の細胞製剤はウイルスに感染した細胞を殺傷する仕組みで、静脈に点滴投与する。特に免疫力の低下でコロナが重症化したがん患者らに効果が見込め、ウイルス株の変異にも強いという。
同研究所などは、ヒトES細胞からコロナ治療用の免疫細胞「キラーT細胞」を作製することに成功した。藤田医科大で血液がんの患者らを対象に3年後に臨床試験を行い、2029年度の実用化を目指す。
今回の作製法は鳥インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)など他の急性ウイルス感染症にも応用可能という。同研究所の河本宏所長は「未知のウイルスの世界的大流行(パンデミック)に備え、まずコロナでウイルスに対するキラーT細胞の有効性を示したい」としている。