自民党総裁選に向け、二階派にいた議員らの動向に注目が集まっている。派の元幹部は再結集を模索するが、派閥の解散決定や会長だった二階俊博・元幹事長の引退表明で、かつての結束には陰りも見られる。派の元所属議員で総裁候補に浮上している小林鷹之・前経済安全保障相に対する評価も、派内で一致していない。
7月29日夜、東京・赤坂の焼き肉店。二階派の事務総長を務めた武田良太・元総務相は、派に所属していた若手議員らに「これからもまとまっていこう」と結束を呼びかけた。武田氏と派の会長代行だった林幹雄・元幹事長代理は、この日を含めて22日、25日、8月1日と計4回、当選回数別などで元所属議員を招いた懇親会を開催した。
二階派は、二階氏が歴代最長の5年超にわたって幹事長を務めた安倍、菅両政権下で主流派として隆盛を誇ったが、岸田政権では一転して非主流派に甘んじてきた。武田氏らが懇親会を開催するのは「総裁選で結束して力を示し、次の政権での影響力を確保したい」との思惑があるとみられる。
ただ、二階氏は体調の都合でいずれの懇親会にも欠席した。武田、林両氏以外の出席者は3~7人にとどまり、4回の合計も20人と、派の解散決定時に所属した38人の6割弱だった。懇親会に参加した議員の一人は、「総裁選では派閥単位ではなく、それぞれの考えで動くべきだ」と語った。
党内で「ポスト岸田」候補の一角として認知されつつある小林氏は、刷新感を打ち出せる「新顔」として注目されている。所属した二階派内では、小林氏と同じ千葉県選出の林氏が「相当優秀だ」と持ち上げているほか、若手の一部にも推す動きがある。
一方、武田氏は小林氏の総裁選出馬に慎重とされる。7月29日の懇親会では、次期総裁の資質として「世論の支持が重要だ」と語り、一例として石破茂・元幹事長と小泉進次郎・元環境相の名前を挙げたという。
武田氏は、総務相として仕えた菅前首相と良好な関係で、7月1日には菅、石破両氏と会食した。小泉氏も菅氏に近く、派内では「武田氏は、菅氏と歩調を合わせることで二階派の影響力拡大を狙っているのではないか」との見方が専らだ。
小林氏は「派閥の力学だけで総裁が決まると、党の明日はない」と公言しており、総裁選に出馬する場合でも、派閥色が前面に出ない形になることが想定される。派内のベテランには「ほとんど接点がない」と話す議員もおり、小林氏を派の総裁候補として押し上げる機運は乏しい。
派を率いた二階氏は、総裁選への対応について口を閉ざしている。引退を表明したものの派内には今も慕う議員は多く、「派としての方向性は、二階氏の動き次第で決まるだろう」との声も出ている。