憲法改正より「裏金返せー」…岸田首相の論点整理指示に野党反発、自民内にも戸惑い

岸田文雄首相(自民党総裁)は7日、同党の憲法改正実現本部に出席し、改憲条文案の作成に向け議論を加速するよう指示した。9月の総裁選を前に安倍晋三元首相が率いた派閥の議員ら「岩盤保守」と評された勢力を取り込む狙いもあるとみられる。野党は「憲法改正より『裏金返せー』だ」(社民党の福島瑞穂党首)と反発。自民内にも「車座対話の総括も済んでいないのに唐突だ」(幹部)との戸惑いが広がっている。
「自民の党是である憲法改正の議論を進めるよう総裁としてもお願いする」。首相は会合で「として」ではなく「としても」とわざわざ「も」を付言。内閣のトップとして改憲を進める意欲をにじませた。具体案として踏み込んだのは9条への自衛隊明記の論点整理で、「今月末の具体化を目指し議論を加速してほしい」などと指示した。
首相は6日、自身の地元の広島市内で行った会見で総裁選への対応を問われ「今は経済、外交をはじめ、先送りできない課題に結果を出すべく全力で取り組んでいる。それ以上は申し上げない」との回答にとどめ、出馬を明言しなかった。しかし、今回の改憲指示は再選に向けた意欲の表れとみられている。
改憲には熱心な一方で派閥裏金事件を巡り全国で行った車座対話の総括などには言及しない状態。意気込みの軽重は課題ごとでまだらだ。旧安倍派議員らが抱える裏金(不記載政治資金)の扱いも未定だ。一時は納税や寄付案などが取り沙汰されたものの、うやむやなままとなっている。
首相の改憲前のめりの姿勢に立憲民主党などは「裏金事件などのけじめをつけてからの話」と冷ややか。改憲に前向きな日本維新の会からも「政治改革関連法案で裏切った岸田総理が相手ではタッグは組めない」(若手議員)との反発が上がる。野党の協力を取り付けられる可能性は低い。

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