長崎市が平和祈念式典にイスラエルを招待せず、先進7か国(G7)の日本を除く米英独仏伊カナダの6か国と欧州連合(EU)の駐日大使が出席を見送ったことについて、参列した被爆者らからは様々な声が聞かれた。
長崎県被爆者手帳友の会副会長の三田村静子さん(82)は「核保有国である米国の大使らが、イスラエル不招待を理由に式典を欠席するのは悲しい」と肩を落とし、「今日は静かに犠牲者を悼みたい」と語った。
市はイスラエルを招かなかった理由について、「不測の事態が発生するリスク」を挙げた。被爆者の倉守照美さん(80)は「警護の面から仕方なかったと思う」と判断に理解を示す一方、「大使らには式典に来て被爆者の生の声を聞き、どれほど悲惨な状況になったかを知ってほしかった」と話した。
長崎市は、ウクライナを侵略するロシアと同国を支援するベラルーシを3年連続で招待しなかった。
「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」会長の山崎和幸さん(71)は「イスラエルとロシア、ベラルーシを同等の扱いにしたのは配慮が足りなかったのでは」と述べた。
一連の問題について、鈴木 一人 ・東京大教授(国際政治)は「イスラエルを支持したい西側諸国が自らの政治的な立場を表明するために過剰な反応をしている印象だ。被爆地側は式典を政治的なものを超えた鎮魂の場であると強調するが、世界情勢が不安定になっている昨今、政治的な意味合いが強まっている」と指摘した。
一方、一橋大の秋山信将教授(核軍縮・不拡散)は「原爆の日は、どんな国、どんな人にも核戦争がもたらす帰結を考え、平和を祈念する日にしてもらうのがあるべき姿だ。今回、国際的な安全保障環境の悪化で、社会が核問題に向き合う機会を妨げることになったことは非常に残念だ」と話した。
米報道官「イスラエル大使の招待重要だと考えた」
【ワシントン=田島大志】米国務省のマシュー・ミラー報道官は8日の記者会見で、ラーム・エマニュエル駐日大使の長崎原爆の日の平和祈念式典欠席について「我々はイスラエル大使が招待されることが重要だと考えた」と述べた。米政府として原爆の日を重視する立場を重ねて示してきたとし、「この日に関する日本への敬意は、大使が一つの行事に出席しないことをはるかにしのぐものだ」として、立場に変化がないことを強調した。