岸田首相は南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」の発表を受け、地震対応を優先するため中央アジアなどへの訪問を急きょ中止した。しかし、中止の一報がもたされた時、同行する予定だった記者団は政府専用機に乗って飛行中。専用機内で漏れた記者の驚きの声。その時、何が起きていたのか。同行予定だった記者が報告する。
岸田首相は9日から4日間の日程で、カザフスタン、ウズベキスタン、モンゴルを訪問する予定だったが、地震への対応を優先するため、急きょ中止した。
当初の予定では、岸田首相は長崎で平和祈念式典に出席した後、午後に長崎空港で政府専用機へと乗り込み、中央アジア・カザフスタンへと向かう運びだった。
そのため、同行する記者団は午前8時過ぎに羽田空港で政府専用機に搭乗し、長崎空港で岸田首相を待ち受けるスケジュールとなっていた。
政府専用機の機内では、ちょっと早めの昼食が提供され、私は訪問先で行われる首脳会談の予定原稿を書いていた。
しかし、午前11時半過ぎ。機内Wi-Fiを利用した際に、日本テレビが「岸田首相は外国訪問を中止する方向で調整に入った」と報じたことを知る。
ただ、政府専用機の機内Wi-Fiには容量の制限があるため、同行記者のほとんどは、羽田から長崎へ向かう間はWi-Fiを使わず、情報に接することはなかったようだ。
そして午前11時45分頃、長崎空港に到着しスマートフォンなど電子機器が使える状態になった他社の記者から「えっ、外遊中止だって」といった驚きの声が聞こえてきた。
専用機内が、なんとも言えない空気に包まれる中、記者団は外務省職員の「この後、どうなるかは分かりませんが、とりあえず荷物を持って降りてください」との声に促され、経由地の予定だった長崎空港で政府専用機を降りた。
その後、岸田首相は地震対応を優先するため、中央アジア訪問を中止することを正式に発表した。
同行した記者団は長崎空港で岸田首相の到着を待ち、カザフスタンに行くのではなく、政府専用機で羽田と長崎の間を往復するという、なかなか得がたい経験をすることになった。
国内での災害への危機管理対応と、訪問を予定していた相手国への外交儀礼など様々な要素を考慮し、出発当日のギリギリの瞬間まで調整が行われていたことを痛感する取材だった。