自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、政治資金規正法違反(虚偽記入)に問われた「清和政策研究会」(安倍派)の松本淳一郎・会計責任者(76)の公判が9日、東京地裁(細谷 泰暢 裁判長)であった。検察側は「長年の虚偽記入で政治不信を招き、大きな社会問題を引き起こした」として禁錮3年を求刑し、弁護側は寛大な判決を求めて結審した。判決は9月30日に言い渡される。
起訴状によると、松本被告は2018~22年分の派閥の政治資金収支報告書に、派閥から議員側に還流したり議員側がプールしたりしたパーティー収入のノルマ超過分計約6億7500万円を「収入」や「支出」としてそれぞれ記載しなかったとされる。
検察側は論告で、「政治資金の収支を偽った程度は大きい」と指摘。国会議員ら99人が所属した安倍派の地位や役割を踏まえれば、「民主政治に与える影響は極めて大きく、悪質だ」と非難した。
その上で、前任者から引き継いで虚偽記入を続けた松本被告について、「派閥や所属議員の利益だけを考え、国民による不断の監視や批判という法の趣旨を顧みていない」と批判。派閥幹部らが22年に還流存続の是非を話し合うなど虚偽記入をやめる契機を得たのに継続したとして、「規範意識の鈍麻の程度は著しい」と述べた。
松本被告は5月の初公判で起訴事実を大筋で認めたが、18、19年のプール分は「認識していなかった」と否認した。この点について、検察側は、松本被告が捜査段階で認める供述をしたことなどから「認識していたことは明らかだ」と主張した。
一方、弁護側は最終弁論で「会計責任者に就任する以前からのやり方を深く考えないまま続けており、違法性の認識は希薄だった」と述べた。自己の利益は得ておらず、事実を認めて反省していることなども考慮すべきだと訴えた。
松本被告は最終意見陳述で、「国民に多大な疑惑を抱かせ、政治不信を招いたことは誠に申し訳ない」と謝罪した。