3か国で開発が進められている日本の次期戦闘機の開発計画「GCAP」の姿が、フルスケール・モデルという形で公開されました。よく見ると、これまでの案から、明確に変わったポイントがありました。
まず「とにかく大きい」
日本とイギリス、イタリアの3か国が共同で進める次期戦闘機の開発計画「GCAP(Global Combat Air Programme)」のフルスケール・モデル(原寸大模型)が2024年7月、英国・ファンボロー航空ショーで初めて公開されました。
展示ホール内は照明が落とされていて暗く、正確なサイズまではわからなかったものの、筆者はGCAPのフルスケール・モデルの姿を一目見て、「とにかく大きい」という印象を受けました。
展示エリアの状況的に、ほかの機体とイメージを重ねるしかありませんが、GCAP はF-2やF-35より明らかに大きく、米空軍のF-22や航空自衛隊も使うF-15に匹敵するように思えました。反面、全長については、長さが目立つ中国のステルス戦闘機J-20より短いようでした。
とはいえ、この機体はこれまで登場した戦闘機の中では、大型の部類に入るのは間違いないでしょう。
このフルスケール・モデルは間近まで近づくことができたものの、壁際に設置されていたため、観察できる角度は限られました。それでも見上げたジェットエンジン用の空気取り入れ口はF-35より面積があるように見えます。取り入れ口は、ステルス性の確保につながる「ダイバータレス」と呼ばれる、こぶのような盛り上がりがあるようでした。
機体の尾部は、当初日本で公開されていた水平垂直を兼ねたV字尾翼と異なり、既存のステルス戦闘機と同じくV字型に開いた垂直尾翼になりました。垂直尾翼の面積は機体の大きさに比べて幾分小さく、2つあるジェットエンジンの排気口はF-22と同じようにクサビ形をした板が上下にあるため、推力変更式のノズルの設置が計画されているのがわかります。
なぜここまで大きくなったのか?
GCAPのフルスケール・モデルが展示されていた会場内では、兵器倉を描いた動画も流れていました。
そこには、胴体下で左右に分かれ、各々外側の側面にかけて1枚構成のドアを開ける様子が。搭載されていたのは、ドア内側に欧州製らしき空対空ミサイル、兵器倉内に計8発の小直径の有翼滑空爆弾でしたが、空対空ミサイルより長い兵器を収めることも出来るように見受けられました。
英国側の担当メーカーで、フルスケール・モデルの公開に踏み切ったBAEシステムズは、7月に東京で事前に行われた説明会で「設計の最中であり最終的な形状ではないものの、現在考えている要素をある程度反映した形」と今回公開された機体デザインについて説明しています。しかし、ここまでGCAPのフルスケール・モデルが大型化したのは、航続距離の延長を狙ったためなどと見られます。このほか会場から聞こえた意見として、「発電力の強化」がありました。
GCAPをはじめとした第6世代の戦闘機は、遊軍間で高度なネットワークを構築し効率的な敵の排除を狙っています。それには高性能のコンピューターと高出力の電力が欠かせません。そのためにエンジンの大型化、あるいは、消費燃料の確保へ、機体を大型化したというのです。これが的を射ているのなら、エンジン開発の進み具合もポイントでしょう。
大柄な機体は、日本がこれまでに開発したF-1、F-2戦闘機と大きく異なります。F-1・F-2は配備数から考えて、航空自衛隊の「主力」戦闘機とは言えませんでした。一方、日本国内には常に、海外から導入した機体を上回る国産機をつくりたいという願いがあります。
国際共同開発とはいえGCAPが期待通りに完成すれば、GCAPの航空自衛隊への配備数は、近い将来、空自が導入を進める最新鋭のステルス戦闘機F-35のそれを、さらに上回る可能性が出るかもしれません。それもあわせて、開発の進み具合へより関心が集まるでしょう。