大地震発生で懸念されるエレベーター閉じ込め 「無理に脱出せず救助待って」と業界団体

南海トラフ地震臨時情報が発表され、大地震発生の確率が高まっているとされる中、注意が必要なのがエレベーターだ。東日本大震災では、東京都内で最大9時間閉じ込められた例もあった。業界団体は「無理に脱出しようとせず、外部と連絡を取って救助を待ってほしい」と呼びかける。
内閣府や国土交通省によると、平成23年に発生した東日本大震災の際、全国で少なくとも210台のエレベーターで閉じ込めが発生。乗っていて出られなくなるだけでなく、エレベーターが使えないまま停電や断水が発生して長期化すれば、高層階で水の確保や救援物資の供給が難しくなる可能性もある。
東京都防災会議は、令和4年5月25日、約10年ぶりに首都直下地震などによる東京の被害想定を見直し、公表した。都心南部で直下地震(マグニチュード7・3)が発生した場合、最大で約2万2千件のエレベーター閉じ込めが起こる可能性があると推計。国交省は、閉じ込められた人が救助を待つまでの間に使うため、エレベーターのかご内部に簡易トイレや非常用飲料水などを備えた防災キャビネットの設置を推進している。
実際に、住宅の9割がマンションなどの共同住宅という東京都港区では、飲料水や非常食、簡易トイレに加えてブランケットや音を出すための非常用ホイッスルなどが入ったキャビネットを無償配布しているという。
日本エレベーター協会によると、震度5弱ほどの揺れを検知するとエレベーターは最寄り階に自動的に止まる安全装置もあるという。協会の村上高久事務局長は、エレベーター利用中に地震が発生した場合は「揺れを感じたら行き先階のボタンをすべて押し、最初に停止した階で降りてほしい」とする。閉じ込められた場合は、インターホンで状況を伝えることを勧めるとともに、地震後に避難などで利用すると、閉じ込められる可能性があるので、避けるよう求めている。(梅沢直史)

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