進路予測難しい「迷走台風」、偏西風の影響が弱い夏場に多発 近くに別の台風がある場合も

22日に発生した台風10号は、進路予想が日ごとに変わり、早くも「迷走台風」との指摘も出ている。気象庁は正式には「複雑な動きをする台風」と呼ぶが、過去には思わぬ被害をもたらすケースが多かった。熱帯低気圧が発達した台風は一般に太平洋高気圧の縁を北上し、中・高緯度に達すると、上空の偏西風に流されて北東に進む。一方、夏場は秋に比べて偏西風が高緯度にあるため影響を受けにくく、台風の速度は遅くなって「迷走」しやすい傾向にある。別の台風が近くにある場合もあり、進路が定まりにくい。
台風は単体で動くことはできず、周囲の風の影響で移動する。
令和5年7月に発生した台風6号は沖縄の南に北上した後、偏西風がはるか北側の北海道付近に流れていたことに加え、勢力の強い高気圧が日本列島を覆っていたため、沖縄付近を西進。さらに、西から高気圧が行く手を阻み、Uターンして東に進んだ。高気圧が東に張り出したため、進行方向を直角に変え、九州を経て朝鮮半島を北上した。台風6号は沖縄近海に長期間とどまった結果、大雨や暴風などの影響を与えた。
4年8月末~9月初旬に韓国南部や日本に大きな被害をもたらした台風11号は、小笠原諸島・南鳥島近海で発生し、沖縄の南に西進した後、東シナ海を北上し韓国南部に上陸した。西進した際、付近に熱帯低気圧があったため、2つの接近した台風が相互干渉するような複雑な動きを見せた。これは大正10年に当時の中央気象台の藤原咲平所長が名付けた「藤原の効果」と呼ばれる現象で、11号は熱帯低気圧に流される形で南西に進路を変えた。
平成28年の台風10号は史上初めて東北地方の太平洋側に上陸した台風だ。日本の南東で発生した低気圧が太平洋高気圧の東風に流されて西進し、台風に成長。偏西風が弱く、周囲の他の台風の影響を受けてさらに西へ移動した。北西へ進路変更し東北の太平洋側に上陸する異例の進路をたどった。岩手県では氾濫した河川の濁流に高齢者グループホームの入居者が襲われ、9人が死亡した。

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