選挙区内の有権者に秘書らを通じて香典など計数十万円を配布したとして、東京地検特捜部は、堀井学衆院議員(52)(比例北海道、自民離党)を公職選挙法違反で週内にも略式起訴する方針を固めた。特捜部は堀井氏について、自民党安倍派から還流を受けた収入の一部を政治資金収支報告書に記載しなかったとする政治資金規正法違反(虚偽記入)でも立件する方針だ。
堀井氏は周囲に、事件の責任を取って議員辞職する意向を示しているという。
関係者によると、堀井氏は2012年衆院選で初当選して以降、北海道9区(苫小牧市など)の支援者らの葬儀で、自身名義の香典を秘書や親族に持参させ、枕花も贈っていた。特捜部が時効(3年)にかからない期間で裏付け捜査を進めたところ、提供金額は総額で数十万円に上ったという。
公選法は、政治家本人が持参する場合を除いて選挙区内の有権者に香典を渡すことを禁じ、堀井氏の事務所でも違法性を懸念した秘書が提供中止を進言したことがあった。だが堀井氏は「15年以上やっているから大丈夫」などと再三継続を指示。堀井氏は特捜部の任意の事情聴取に容疑を認め、「自分が香典を出したことが相手に伝わる必要があった」と説明したという。
一方、派閥を巡る政治資金規正法違反事件では、堀井氏は18~21年に安倍派から計2196万円の還流を受け、収支報告書に記載せずに裏金化していたことが判明している。特捜部は、このうち時効(5年)となった18年を除く3年分(計1714万円)について虚偽記入容疑の告発を受けていた。捜査では堀井氏自身が還流された現金を運んだり、収支報告書への不記載を把握したりしていたことを確認しており、虚偽記入への関与を認定する見通しだ。
派閥の事件では不記載額が3000万円未満の議員らの立件は見送られている。だが特捜部は堀井氏については、違法な香典配布などの行為を繰り返し悪質性が高いとして、虚偽記入についても刑事責任を追及する必要があると判断したとみられる。