今日29日(木)に九州に上陸した台風10号(サンサン)は明日午前中にかけてゆっくりと九州北部を横断したあと、四国付近から進路が迷走する可能性があります。台風を移動させる上空の風「指向流」が弱いためで、その後の進路がはっきりしません。暴風域がなくなったあとも「雨台風」として長時間にわたり猛威を振るうおそれがあるため警戒が必要です。
東西どちらの風に引っ張られるか
記事冒頭の図は台風を移動させる指向流である、大気中層の風の予想を示したものです。強い偏西風は北海道付近に離れているため影響を受けることができず、台風は迷走する可能性が高まっています。台風の東西にはそれぞれ高気圧が勢力を強める見込みで、その縁辺をを吹く風の流れが台風を移動させることになりそうです。台風の西側では南に向かう風が、台風の東側では北に向かう風が吹くと予想されていて、どちらの影響を強く受けるか次第でその後の進路が変わります。
参考 世界各国の気象機関が計算した進路の数値シミュレーション結果
このアニメーションは、世界各国の気象機関が計算した数値シミュレーションの結果をあらわします。アンサンブル予報という手法による低気圧中心の計算結果で、初期値に意図的な誤差を与えることで予報の確実性などを検討する材料になります。これらを比較すると、四国付近に進んだあとは東西のばらつきが大きくなり、北上してから北東に進む予想をしているグループと、南下してから南西に進む予想をしているグループがあるのがわかります。前述の2つの高気圧のうち、どちらの風に流されるかで分かれているといえます。現時点では北東進する予想をしているグループが多数派です。さらに予報が変わる可能性もありますが、進路の予報が変わっても一喜一憂せず、大雨への備えを行うようにしてください。進路の信頼度が低い影響で、台風予想進路図の予報円がかなり広くなっています。予報円の広さは台風の大きさや強さとは関係ありません。台風情報を正確に理解して、適切な防災行動・避難行動をとれるようにしましょう。
長居する台風 かさむ雨量に警戒
台風10号は明日30日(金)には暴風域がなくなり、暴風による被害の可能性は小さくなる予想です。一方、雨の影響は週末にかけてもなかなか衰えません。いわゆる「雨台風」の状態になり、台風の中心から離れた地域でも断続的に激しい雨となるおそれがあります。なかなか移動しないことで雨量がかさんで、通常の台風以上に危険な状況になるおそれがあるため、大雨災害への警戒が必要な状況が続きます。