兵庫県の斎藤元彦知事らのパワハラ疑惑などが文書で告発された問題を巡り、文書を作成した元県西播磨県民局長の男性(60)の私的な情報を漏洩(ろうえい)した疑いがあるとして、県が前総務部長の井ノ本知明氏らの調査を検討していることが28日、関係者への取材で分かった。男性は7月に死亡し、直前にプライバシーへの配慮を周囲に訴えていた。内部調査ではなく、弁護士に調査を依頼する方針。
県は元副知事の片山安孝氏や前理事の小橋浩一氏、産業労働部長の原田剛治氏の調査も検討。井ノ本氏を含め、いずれも文書で名前が出た知事の側近で、男性の懲戒処分にも関与したとされる。
男性が3月に匿名で文書を報道機関などに配布した後、斎藤氏の指示で作成者を調べていた片山氏らが男性の公用パソコンを調査。告発文書のデータを確認したことがこれまでに判明している。
関係者によると、井ノ本氏らは4月ごろから、パソコンに保存されていた告発内容とは無関係な男性の私的情報を県議らに開示していた疑いがあるという。
県の懲戒処分の指針では、職務上知り得た秘密を故意に漏らした職員を処分の対象としている。県は井ノ本氏らがこれに抵触する可能性があると判断。外部の弁護士に調査を委託する方向で調整を進めているという。
男性は7月19日の県議会調査特別委員会(百条委員会)に証人として出頭を予定。しかし、一部の委員が告発とは無関係な情報も提出するよう求めているとして、代理人を通じプライバシーを保護するよう百条委に要請するなど、私的情報が流布されていることに不安を抱えていたという。
男性は同月7日に死亡。自殺とみられ、証言はしなかったが、陳述書などを準備していた。
8月23日に非公開で行われた百条委の証人尋問では、職員が私的情報の持ち出しについて「調査の必要があると認識しており、弁護士会に相談している」と証言した。