自民党総裁選の告示(12日)まで1週間を切り、出馬を表明している陣営の活動が本格化する中、7日には、小泉進次郎氏が東京・銀座で街頭演説した。今回は候補者が全国に散る形での街頭演説会も行われるとみられ、国内外で相次ぐ選挙を巡る事件を受け、警察当局は総裁選の警備としては異例の〝厳戒態勢〟をとる。衆院選を見据えた選挙警備の前哨戦となりそうだ。
「手荷物検査にご協力をお願いします」
7日午後0時過ぎ、銀座の中心部にある銀座4丁目交差点では、歩行者天国となっている車道部分に柵などで聴衆エリアが設けられ、入る人に陣営関係者と警察官が手荷物検査や金属探知機でのチェックを行っていた。
周囲は私服、制服の警察官が多数警戒。小泉氏が登壇する選挙カーの周りには人が入れないようスペースが設けられる。
演説が始まっても、背後では警察官の笛の音が響き続ける。週末の昼の銀座とあって聴衆だけでなく歩行者も相当な数に上る。警察官は雑踏事故につながらないよう、「ここでは立ち止まらないでください」と声をからし、誘導を続けた。
選挙を巡る警備の在り方が大きく変わったのは、令和4年、安倍晋三元首相が銃撃されて死亡してからだ。5年には岸田文雄首相が和歌山市の演説会場で襲撃された。
これらの事件を機に、警察庁は要人警護の基本事項を定めた「警護要則」を改定し、都道府県警の警護計画を警察庁が事前審査する取り組みを始め、警護に携わる人員も増強。政党や陣営などに対して、手荷物検査や金属探知機の使用を要請しているほか、聴衆との接触回避などへの協力も呼び掛ける。人工知能(AI)やドローンなど、最新機器の活用も進んでいる。
また、4月の衆院補選で政治団体「つばさの党」による選挙妨害事件や、米国では大統領選を巡ってトランプ氏が銃撃を受け負傷する事件も発生。選挙警備を巡る情勢は緊迫感を増しており、街頭演説が行われる会場は厳戒態勢が敷かれる可能性が高い。ある警備関係者は「そのときの警備情勢と現場の状況にあわせて、適切な警備を実施していく」と力をこめる。
総裁選は事実上、「次の首相」を決める選挙となっている上、今回は過去最多の候補者が争うことが確実となった。閣僚や政党の要人も多く、それぞれの地元や有権者に呼びかけるため、街頭演説を含めた選挙活動は全国に広がるとみられ、地方で警護を行わなければならない事態も予想される。さらに、総裁選後の「解散」を口にする候補者もおり、早期の衆院選も現実味を帯びる。警察幹部は「これまでの警護の見直しの集大成となる衆院選を見据え、総裁選もより厳しい警戒で臨む」と話している。(橋本昌宗)