「かばい続けると党がもたない」…兵庫県知事に維新が辞職要求、知事は「自分が進む道は自分が決める」

パワハラなどの疑惑で批判を浴びる兵庫県の斎藤元彦知事に対し、日本維新の会が辞職要求を突きつけた。2021年の県知事選で斎藤知事を推薦した維新は、問題について静観を貫いてきたが、批判の高まりで方針転換を余儀なくされた。
「間違いは間違いと認めて謝り、辞職して県民に問うべきだ」
9日夕、大阪府庁で記者団の取材に応じた日本維新の会の吉村洋文・共同代表(大阪府知事)は、7日に電話で斎藤知事を説得した際のやりとりを説明した。斎藤知事は最後まで、承諾することはなかったという。
斎藤知事は元大阪府財政課長で、吉村氏とは上司と部下の関係にあった。吉村氏は斎藤知事の現状について「予測できなかった」と戸惑いを隠せず、「自身に非がなかったか、一線を越えていなかったか。深く考えてもらいたい」と話した。
一方、吉村氏とほぼ同時刻に兵庫県庁で記者団の取材を受けた斎藤知事は、「(維新の)申し入れは重く受け止める」としつつ、「自分がどういう道を進むべきかは、自分が決める」として、辞職を否定した。
維新が辞職要求を決断した根拠として、吉村氏は二つの点を強調した。
一つ目は、付箋を投げつけたり、机をたたいたりというパワハラ疑惑で指摘された行為の一部を斎藤知事が認めた点だ。吉村氏は「僕がやったら、職員はフリーズ(硬直)する。知事がやってはいけない行為だ」と指摘した。
二つ目は、告発に対する対応だ。斎藤知事は告発文書を把握した直後から告発者の特定に動いた。告発者の男性職員(7月に死亡)は4月4日に県の公益通報制度を利用して同内容を通報したが、県は5月7日に「(文書は)核心的な部分が事実ではない」として男性職員を停職3か月の懲戒処分とした。吉村氏は「早期に結論を出すのは間違った権限執行だ」と批判した。
問題発覚後、維新は「真相究明が先」として、県議会の百条委員会などでの議論を見て対応を判断するとの立場を取ってきた。
潮目が変わったのは、8月の大阪府箕面市長選だ。地域政党・大阪維新の会が公認した現職首長が、結党以来初めて敗れた。応援に入った吉村氏は直接、有権者から党の対応に苦言を呈されたという。近く次期衆院選が予想され、党内では「斎藤知事をかばい続けると、党がもたない」との声が強くなった。
百条委で6日に行われた証人尋問で、斎藤知事は内部告発に対する県の対応について「問題ない」との見解を繰り返した。
県議団が8日に行ったオンライン会議では、「知事の資質に疑問が残る」など厳しい意見が飛んだという。
9日に東京都内で記者会見した藤田文武幹事長は「方針転換と言わざるを得ない。批判は真正面から受け止める」と述べた。
不信任案提出の公算

斎藤知事が辞職要求を拒否したことで、兵庫県議会(定数86)では、知事への不信任決議案が提案される公算が大きくなっている。
不信任案は、最大会派の自民党(37人)と立憲民主党系の第4会派「ひょうご県民連合」(9人)が19日開会の9月議会への提案を検討しており、第2会派の維新の会(21人)も賛成の構えを見せている。維新県議は「斎藤知事は誰の言うことも聞かない状態だ。不信任しかないのではないか」と話す。
可決には出席議員の4分の3以上の賛成が必要で、全議員出席の場合、可決ラインは「65人」となる。自民、県民連合、維新の3会派でこのラインを超えており、提案されれば可決される可能性が高い。
不信任案が可決された場合、知事は10日以内に議会を解散しなければ失職する。一方、解散を選べば、40日以内に県議選が実施される。選挙後初の議会で改めて不信任案が出されれば、過半数の賛成で可決される。知事が再び議会を解散することはできず、失職して知事選が行われる。
斎藤知事は9日、記者団から不信任案への対応を問われ、「仮定の質問には答えられない」と述べるにとどめた。

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