創価学会の衰勢を反転させるべく、故・池田大作名誉会長の長男による“継承”が浮上 透けて見える「池田氏のカラーを強調する戦略」

創価学会名誉会長だった故・池田大作氏が所有していた自宅の名義が変更された。遺産分割の法定相続人は92歳の妻・香峯子氏のほか、長男で主任副会長の博正氏(71)、三男の尊弘氏(66)、次男で故人の城久氏の2人の子(池田氏の孫)の計5人。そのなかで、「池田氏亡き後に空席となったSGI(創価学会インタナショナル)会長に就くのではないか」という観測も出ているのが、長男・博正氏だ。池田氏自身は世襲を否定していたが、博正氏が後継者となることで、「血脈の力」を押し出すのではないか、という見方もある──。ノンフィクション作家・広野真嗣氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
関西池田記念大講堂
池田大作氏の長男が世襲をするという見方の背景には、止まらない創価学会の退潮傾向がある。5期目の原田稔氏(82)は高齢で、9月末に任期満了を迎える公明党代表は山口那津男氏(72)の交代方針だが、刷新感を打ち出せるかは微妙だ。ポスト池田の刷新感とは程遠いのだ。
流れを反転させるべく、子息による“継承”が浮上するのではないか──。「池田家」の相続登記に長男の名前が登場すれば、それがシグナルと捉えられるのではないかと注目されたが、憶測は憶測に終わり、代わりに、池田氏自身の神話を想起させる日付の登記が確認されたのである。
自民党総裁選後の解散論が浮上しているが、奇しくも池田氏の死から1年というタイミングも近づく。公明党にとって来たる決戦は俄然、「弔い」の色彩を帯びる可能性がある。とりわけ注目されるのは関西地区だ。
なにしろ日本維新の会は、大阪で4つ、兵庫で2つの計6小選挙区で公認候補を擁立した。10年以上続いた両党間の「すみ分け」が解消され全面対決となるのが確実で、維新の勢いが強まっていた時期は「公明党は全敗か」という声も出ていた。
結束を強調してか、8月20日付の機関紙・聖教新聞は、池田氏の名を冠した「関西池田記念大講堂」の鍬入れ式を1面トップで報じている。
結婚式場・旧太閤園の敷地に、地下1階・地上4階、延べ2万4500平方メートルの豪華施設を建設する計画。今年、この計画が1面を飾るのは、元日に池田氏の写真入りで報じたのに続き2度目だ。
衰勢が強まる教団にどこまで需要があるのか疑問も湧くが、とにかく池田氏のカラーを強調する戦略が透けて見える。
8月の式典で原田氏は、大阪事件につながる選挙活動中の1956年、池田氏が「大福運の関西城をつくる」と宣言していたと前置きし、「師恩に報いる勝利の前進を」と檄を飛ばしている。生前の「永遠の師匠」の発信は、今も組織を動かす力なのだ。

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