触手がない新種クラゲ、沖縄で発見…「シライトトンボダマクラゲ」と命名

黒潮生物研究所(高知県大月町)は、峯水写真事務所(静岡県清水町)、九十九島水族館海きらら(長崎県佐世保市)と合同で実施した沖縄県の糸満沖・久米島沖でのクラゲの採集調査で得たクラゲを分類学的に精査したところ、新種であることが判明した。標準和名「シライトトンボダマクラゲ」と命名し、8月29日、学術雑誌で発表した。(広浜隆志)
「シライト――」は2018年、黒潮生物研究所の戸篠祥主任研究員らが採集した。約5ミリと小さく、透明な釣り鐘のような形をしている。多くのクラゲにある器官で、餌に毒針を刺すなどして捕食する役割を担う「触手」や「口触手」がないことが特徴。
新種発見は、昨年9月に高知県で開かれた日本刺胞・ 有櫛 動物研究談話会(NCB)で、目撃例のないクラゲが九十九島周辺の海域で採集されたという発表がきっかけだった。
関心を持った戸篠主任研究員が、論文や書籍を調査し、このクラゲが中国近海で発見例はあるが、日本では発見例がないことを突き止めた。さらに沖縄で採集したクラゲと似ていることから形態を比較すると、沖縄の個体には「口触手」がないことがわかり、戸篠主任研究員らは、両個体は近しいが別種で、沖縄のクラゲは未記載種(新種)であると判断した。
両個体は、装飾品や美術品を飾るガラス玉「とんぼ玉」をイメージさせることから「トンボダマクラゲ」と名付け、沖縄の新種は滝のような白い筋が「白糸」のように見えたため「シライトトンボダマクラゲ」と命名した。
戸篠主任研究員は「両種ともまったく生活史はわかっておらず、採集調査を続けて生態に迫りたい」と話している。

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