記録的大雨の被害が大きかった石川県珠洲市大谷地区の珠洲大谷川周辺について、国土交通省は29日、能登半島地震ですでに山の一部が崩壊していた場所で大雨による土石流が起きていたと発表した。現地調査を率いた土木専門家は「能登半島地震が大雨被害を拡大させる要因になった」と指摘。相次ぐ災害で山肌が緩んでいるとして、住民に早期避難を呼びかける仕組みが必要としている。
調査は珠洲市の要請にもとづき、同省の緊急災害対策派遣隊(テックフォース)が実施。川の河口から1キロの範囲で、元日の地震で崩壊した4地点を調べたところ、このうち3地点で土砂が流出するなどし、下流の土石流につながったことを確認した。浄正寺近くの調査地点では、地震で尾根が崩れ、両側の谷に土砂が流出。今回の大雨で谷にたまっていた土砂が流れ出し、下流の民家などを押し流していた。
崩壊が確認された地点には不安定な土砂が残っていることから、現地調査を行った国立研究開発法人・土木研究所の杉本宏之上席研究員は「山あいは現在も土砂災害のリスクを抱えている。防災気象情報を早めに出すなど、速やかに住民避難を促すような運用が考えられる」と話している。
大谷地区では土砂に巻き込まれて1人が死亡。水道復旧の見通しも立たないことから、市は地区の住民を対象に2次避難を検討している。