福井・中3殺害、再審公判開始へ 検察側が異議申し立て断念

福井市で1986年に中学3年生の女子生徒(当時15歳)が殺害された事件で、殺人罪で懲役7年が確定して服役した前川彰司さん(59)の第2次再審請求を認めた名古屋高裁金沢支部決定に対し、検察当局は28日、異議申し立てを断念すると明らかにした。決定が確定し、前川さんの再審公判が開かれることになる。無罪となる公算が大きい。
検察側の対応が焦点となっていた。前川さんに対し、再審開始決定が出たのは2度目。第1次請求では2011年に高裁金沢支部が再審を認める決定を出したが、検察側の不服申し立てにより、名古屋高裁の異議審で取り消された経緯がある。
23日の高裁支部決定は、前川さんが有罪となる根拠となった知人らの証言について「捜査機関による誘導や不当な働きかけがあった疑いがある」として信用性を否定。弁護側が提出した新証拠と確定審での旧証拠を総合的に検討し、「(前川さんを)犯人と認めることができない」と結論付けた。
決定では検察への批判も展開。弁護側が新証拠とした捜査報告書について、検察が確定審の段階から事実関係の誤りを認識しながらも明らかにしていなかったと述べ、「不誠実で罪深い不正行為」と指摘した。
この事件は86年3月19日夜に発生。福井市の市営住宅に1人でいた女子生徒が刃物で刺されるなどして殺害された。前川さんは約1年後、殺人容疑で逮捕された。1審は無罪だったが、2審は心神耗弱状態だったと認めて懲役7年の逆転有罪とし、最高裁で確定した。【木島諒子】
福井女子中学生殺害事件
福井市の市営住宅で1986年3月20日、中学3年の女子生徒(当時15歳)が殺害されているのが見つかった。知人らの目撃証言などから前日19日夜に殺害したとして、福井県警は約1年後に前川彰司さんを殺人容疑で逮捕。1審は無罪だったが、逆転有罪とした2審は心神耗弱状態だったとして懲役7年を言い渡し、97年に最高裁で有罪が確定。前川さんが満期出所した後の第1次再審請求では、名古屋高裁金沢支部が目撃証言の信用性を否定するなどして再審開始を認めたが、異議審で名古屋高裁が取り消し、最高裁で2014年に確定した。

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