名古屋市バス、扉の閉め忘れ走行相次ぐ…閉めないと発車できない車両に順次入れ替えへ

名古屋市の市バスが、扉を開けたまま走行する事案が相次いでいる。2024年度は、18年度以降で最多となる8件が発生している。乗客が転落すると大事故につながりかねず、市交通局は「危機的な状況」に位置付け、車両更新時に閉扉状態でなければ発車できない車両への入れ替えを進めて、再発防止に取り組んでいる。
今月15日、約60人が乗車した満員状態の路線バスが、熱田区で前扉を開けたまま停留所を出発した。約8メートル走行したが、転落した乗客はおらず、けが人はいなかった。市は昨年12月、同年7月に発生した同様の事案を受け、中部運輸局から路線バス1台を20日間使用停止とする行政処分を受けたばかりだった。
市交通局によると、扉を閉め忘れ発進してしまう事案は18年度以降、毎年度0~2件で推移していたが、24年度は年度途中ながら最多の8件に上っている。15日の運転手は「後扉に気を取られ閉め忘れた」などと話していたといい、他の7件についても原因は運転手の確認不足によるものとみられる。
同局は運転手に対する確認の徹底などを周知しているが、ソフト面だけでは限界があるとして、23年1月からは、前後が閉扉されていなければアクセルを踏めない新型車両への入れ替えを始めた。新型車両は、1台約2400万円。物価高騰などの影響もあり、以前より1台約100万円値上がりしている。
市バスは18年程度を目安に車両を更新しており、現在は保有する約1000台のうち、約250台が新型になった。また、後扉を閉めなければ発進できない現行型もあり、全営業所で置き換えを進めている。
同局自動車運転課の担当者は「扉を閉め忘れた状態での走行は大変危険で重く受け止めている。運転手が閉扉を確認するのは大前提だが、ハード面を整備することで発生を防ぎ、安全運行に努めたい」と話している。

扉を開けたままの走行は、市バスに限らず、民間事業者でも発生している。高速バスを含め約620台を所有する県内最大規模のバス事業者の名鉄バス(名古屋市中村区)でも、23年度に3件、24年度に2件発生している。同社も、扉を閉めなければ発車できない車両への更新を進めており、抜本的な対策としてハード面に力を入れている。

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