留萌の女子高生殺害、コンビニで助け求めたことに激高し暴行…加工された動画でも裁判員「ショッキングな内容」

犯行時はまだ19歳。自分の罪の大きさに恐れおののき、審理中に何度も泣き崩れた。そうだとしても、刑を大きく減じることはできない。裁判官と裁判員は、悩み抜いた末にこう結論づけた。昨年4月に北海道旭川市の神居大橋で起きた女子高校生の殺害事件を巡り、殺人罪などに問われた被告(20)を懲役23年(求刑・懲役25年)とした7日の旭川地裁判決。「懲役15年が相当だ」と訴えていた弁護側も、被告の意向を尊重して控訴しないことを決めた。(高橋剛志、岡絃哉)
「身勝手で理不尽というほかなく、酌むべき点は全くない」。小笠原義泰裁判長が判決文の朗読を始めて8分ほどが過ぎた頃、法壇を見つめていた被告の目から涙がこぼれた。
自身と内田梨瑚被告(22)(殺人罪などで起訴)が女子高校生(当時17歳)に暴行を重ね、神居大橋から転落させた「動機」に言及した場面だった。
判決によると、被告は女子高校生を連れ回しながらコンビニ店に立ち寄った際、女子高校生が助けを求めたことで「警察に捕まるかもしれない」と激高。そこから両被告の暴行はエスカレートし、橋の欄干に座らせた女子高校生の体を押すという結末に至ったという。
「犯行態様は残酷で極めて悪質」「被告が主体的に関与したことは明らか」
小笠原裁判長からは厳しい言葉を次々にかけられ、「内田被告の意思に逆らえなかった」という自身の主張も退けられた。しきりに涙を拭う被告。ただ、判決の朗読が終わるまで背筋だけは伸ばし続け、退廷時には検察官と遺族の代理人弁護士が座る席に向かって深々と一礼した。
「女子高校生が転落する直前に両被告が体を押し、さらに内田被告が背中を押した」という被告の説明は、今回の裁判員裁判で初めて公になったものだ。
内田被告側は「事実に反する部分がある」との見解を示し、この日の判決も全面的に信用性を肯定したわけではない。それでも、女子高校生の遺族は閉廷後、代理人を通じて「本当のことを言っているように感じた」とコメント。「娘の最後を知ることができました」とも述べている。

「ショッキングな内容」…裁判員

判決後には裁判員を務めた男性4人が地裁の一室で記者会見し、それぞれの苦悩や葛藤を打ち明けた。
「審理で見聞きしたものが、非常に重くのしかかっている」。一人だけ実名を明かした旭川市の伊藤正光さん(50歳代)は、会見の冒頭でこう振り返った。
5日間に及んだ証拠調べでは、被害者が神居大橋で両被告に土下座させられたり、暴行を受けたりする場面などの動画が示された。裁判員の精神的負担を軽減するため、映像の一部は加工されていたが、それでも「ショッキングな内容だった」という。別の裁判員経験者も「現実の社会で起きた事件とは思えなかった」と振り返った。
今回の公判は、事件当時18~19歳の被告が道内で初めて「特定少年」として審理されたケースでもあった。ただ、4人とも被告の年齢を過度に意識することはなかったといい、40歳代の男性会社員は「被告が犯した罪の大きさに見合った評価を与えることが大事だと考えながら審理に臨んだ」と語った。

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