岩手県大船渡市で発生した大規模山林火災の影響で、岩手大三陸水産研究センター(岩手県釜石市)の大船渡市三陸町綾里にあるサケ・マスの養殖研究の試験池で飼育していたサクラマスとニジマスが大量死した。品種改良していた系統のうち6~7割が失われたとみられる。センター長の平井俊朗教授は「被害の全容はまだ把握できていないが、数年掛けてきた研究の成果が無くなってしまった」と落胆している。
被害に遭った施設は岩手大と釜石市、民間企業などが連携して2020年にスタートした、釜石湾でのサクラマス養殖を目指すプロジェクトの一環。綾里地区で廃業した養殖施設を借り、高水温にも耐えられる品種を開発する研究に取り組み、稚魚など約2万匹を飼育していた。
周辺の井戸や川から試験池に水をくみ上げていたが、2月26日に発生した山林火災に伴う停電でポンプが止まり、酸素不足に陥ったとみられる。火災発生から約2週間後の10日、平井教授らが試験池を訪れ、大半の魚が死んでいるのを確認した。
研究への影響は深刻で、平井教授は「決まった親の血を受け継ぐ子どもを足かけ5、6年も代をつないで改良している種もあったが、またゼロから積み上げることになる」と肩を落とす。死んだ魚は10、11日に教員や学生らが撤去した。
火災前には試験池を綾里小児童が見学するなど地元とのつながりも生まれていたという。研究再開のめどは立っていないが、平井教授は「引き続き同じ場所で研究し、今後も地元に貢献していきたい」と話している。【西本紗保美】