農作物などに被害を与える特定外来生物「タイワンリス(クリハラリス)」の駆除を進める神奈川県鎌倉市は今夏、捕獲に関する情報を紹介する「鎌倉市タイワンリスニュース」を発刊した。捕獲従事者らに、タイワンリスの生態や上手な捕獲法などの情報を提供し、被害拡大防止を図る。不定期だが年2回程度の発行を目指すという。(菊池裕之)
タイワンリスは、台湾や東南アジア原産の外来種で体長は尾を含めて40センチほど。神奈川県内では三浦半島で野生化がはじまり、現在は横浜市や川崎市でも生息が確認されている。農作物被害のほか、樹皮を剥いで樹木の枯死につながったり、電話線をかじったりする事例もあるという。
鎌倉市は2000年度から、農作物や果樹などにタイワンリスの被害を受けた市民に捕獲檻を貸し出している。05年に外来生物法の特定外来生物に指定されて以降は、市の防除実施計画に基づき、捕獲従事者証を発行し、檻による捕獲と駆除を行ってきた。
市内の捕獲数は徐々に増えていたが、23年度から急増。前年度から倍増の2861匹に上り、24年度も2202匹に。今年度も前年度を上回るペースで捕獲が続く。捕獲したリスは委託業者が回収するが、処理費は過去2年度とも当初予算では足りず、補正予算で増額した。市環境保全課は「山の果樹の実りに合わせて、捕獲数は隔年で増減を繰り返すと言われていたが、その傾向が崩れてきた」と警戒する。
このため、上手に捕獲するための情報などを発信しようと、ニュースの発刊を決めた。7月に出た第1号はA4判4ページ。年間捕獲数の推移や地区別の捕獲数のほか、有効な餌などを紹介。落花生を使うことが多かったが、市ではオリーブオイルを数滴垂らした食パンを薦めており、市有地に設置した檻にはかりんとうを使っているという。また、捕獲歴の長い市民のインタビューも載せた。
ニュースは捕獲従事者252人に郵送したほか、市の公式サイトにも掲載。同課は「25年間、捕獲用の檻を貸し出してきた中で得られた、うまく捕るための情報をお伝えしていきたい。捕獲数を増やすための参考にしてもらえれば」と話している。
ピーナッツ
ニュースの第1号では、捕獲歴10年以上で、昨年度は96匹ものリスを捕まえた市民に秘訣を聞いている。
檻は、リスの動線を観察した上で、庭の木2か所とブロック塀の上の計3か所に設置。毎月の捕獲数などを記録に残して自分なりに分析しており、数が減ってきたら檻の場所を適宜変えているという。
餌として使っているのは殻付きのピーナツ。ポケットに入れて持ち歩き、毎日数回の見回りの際に交換することも。ブロック塀上の檻の周辺には、撒き餌としてすり潰したバターピーナツも散らばせている。「匂いにひかれてリスが入りやすくなる」という。