セキュリティー対策弱い「デジタル地域通貨」、1億円分不正取得か…流出クレカ情報を悪用

他人名義のクレジットカード情報などを使って不正に取得した「デジタル地域通貨」でゲーム機などを購入したとして、大阪府警がベトナム国籍の指示役の男(33)ら21人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)などの容疑で逮捕、送検していたことが捜査関係者への取材でわかった。自治体によるデジタル地域通貨の導入が進む中、府警はセキュリティー対策の弱さを狙われた可能性があるとみている。
ベトナム国籍21人を摘発

21人はいずれもベトナム国籍の男女。知人やSNSなどを通じて知り合ったといい、一部は有罪判決が確定している。
捜査関係者によると、指示役の男らは昨年7月、不正に取得した大阪府豊中市のデジタル地域通貨「マチカネポイント」約10万円分を使い、同市内の家電量販店でゲーム機3点を購入するなどした疑い。
指示役の男らはフィッシング詐欺で流出した他人名義のクレジットカード情報などを悪用し、ポイントを不正取得。ゲーム機などを売却し、得た金の一部をベトナムにいる人物に送っていたという。府警はスマートフォンの解析結果などから、送金相手はさらに上位の人物だったとみている。
2023年11月、豊中市から不正利用の相談があり、府警が捜査したところ、23~24年に1億円分のマチカネポイントが不正取得されていたことが判明。21人との関連を調べ、不正に得たポイントでゲーム機など計約350万円分を購入していたことを裏付けた。
マチカネポイントはスマホの専用アプリにクレジットカード情報を入力してポイントを購入すると、5%分が上乗せされる仕組み。1ポイントは1円に相当し、同市内の加盟店でQRコードを読み取って使用する。ポイントの取得は現在、終了している。
同市によると、ポイントを購入する際、カード利用者の本人確認が不十分だったとして、事件後は2段階認証を必須にした。同市は「当時の対策は万全ではなかった。フィッシング詐欺などについての注意喚起もしていく」としている。
自治体の発行、5年で8倍

デジタル地域通貨を導入する自治体は増えている。
専修大の泉留維教授(地域通貨論)によると、デジタル地域通貨は、コロナ禍でキャッシュレス決済の流れが広がり、自治体が相次いで導入。活用している自治体などの数は昨年末時点で少なくとも289に上り、5年前の約8倍となった。
ただ、不正利用も相次いでいる。群馬県警は8月、不正に入手したクレジットカード情報で前橋市のデジタル地域通貨約11万円分を購入したとして、ベトナム人を電子計算機使用詐欺容疑などで逮捕した。埼玉県熊谷市では昨年3月、フィッシング詐欺で流出したとみられるカード情報を悪用してデジタル地域通貨を購入したケースが確認され、一時サービスを停止した。
泉教授は「デジタル地域通貨はポイント還元率の高さで利用拡大を図っていることが多い。そのため、セキュリティー対策の予算が後回しになっているのではないか」と指摘する。
◆デジタル地域通貨=スマホの専用アプリなどを使って決済する地域限定の電子通貨。自治体や商店街、金融機関などが発行し、地域経済やコミュニティーの活性化などを目的に幅広く活用されている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする