第2次世界大戦を巡る証言を記録している市民団体「戦場体験放映保存の会」(東京)は27日、戦争経験者による証言集会を都内で開いた。「語らずに死ねるか!」をテーマに、100歳の元日本軍兵士ら14人が登壇し、壮絶な体験を伝えた。
「地獄絵図だった」――。1945年、米軍に追われ、フィリピン・ミンダナオ島の密林に逃げ込んだ坂上多計二さん(100)(鹿児島県姶良市)は声を絞り出した。
さまよううち、木の根元に寄りかかり、ほほえんでいる日本兵を見つけた。だが近づくと、すでに事切れている。目元と口元にウジ虫がうごめき、薄目をあけ、白い歯を見せて笑っているように見えたのだ。辺りには死臭が漂っていた。
密林の小屋に身を潜めていたある日、日本兵が「泊めてほしい」と助けを求めてきた。余力がなく、断った。翌日、近くでその兵士が倒れていた。家族写真が散らばっている。「望郷の念を抱き、亡くなったと思うと胸が痛んだ」と振り返った。
同会は2004年に設立され、これまでに約1800人の証言を動画で記録してきた。証言集会は07年以降6回目の開催で、今回は約800人の来場者が聞き入った。戦争体験者の高齢化により、証言集会は最後となる。同会の中田順子事務局長(51)は「今後は集めた動画を編集し公開する活動や、戦争に関する資料収集に力を入れていきたい」としている。