《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”

毎日のように「クマ被害」のニュースが報じられている。10月22日には、岩手県盛岡市内の児童公園にクマ2頭が出没。公園敷地内に居座って、近隣を騒然とさせた。同じ22日には、福島県会津美里町で高齢夫婦がクマに襲われて緊急搬送されている。熊による人身被害が相次いでおり、”過去最悪ペース”と言われている。
岩手県北上市では10月8日、きのこ採りに出かけ行方不明になっていた男性の遺体が発見された。引っかき傷などがあり、死因は山林内でクマに襲われての出血性ショックだと断定された。
その被害からわずか9日後の10月17日、同じ北上市で新たな犠牲者が出たことは記憶に新しい。亡くなったのは、近隣の温泉旅館で働いていた笹崎勝巳さん(60)だ。遺体が発見されるまでの経緯について、全国紙の社会部記者が解説する。【前後編の前編】
「笹崎さんは10月16日午前、露天風呂の清掃に行ってから行方不明になっていました。付近には、クマとみられる体毛や血痕が残されていたといいます。翌17日午前、露天風呂から50メートルほど離れた雑木林で遺体が見つかりました。
遺体は激しく損傷していましたが、司法解剖の結果、笹崎さんと認定されました。死因は出血性ショックとされています」
遺体の近くにいたツキノワグマ1頭は、その場で猟友会によって駆除された。北上市猟友会・和賀支部会長の鶴山博氏が、当時の状況を証言する。
「露天風呂の斜面の上、直線距離で50メートルくらい離れた雑木林のなかで、引きずられたと見られる遺体を発見しました。そのすぐ近くに、一頭のクマが佇んでいた。クマが遺体から5メートルほど離れた草むらに移動するのを待ち、猟友会の人間が駆除しました。
オスの成獣で、体長1.5メートル、体重は約80キロ。DNA検査の結果待ちですが、亡くなった男性を襲ったクマで間違いないと思います」
駆除されたクマは、冬眠直前にもかかわらず、かなり痩せていた。
「冬眠直前の栄養を蓄える時期ですが、駆除した熊の身体を調べたら、脂肪分が少ないことがわかりました。一般的に成獣の場合、5センチくらい身体に脂肪がついているものですが、それが全くありませんでした。木の実などは脂肪になりやすく、肉類はなりづらい。人を襲うまで、いったい何を食べていたのか……」
長く北上市の猟友会に所属している鶴山氏でも、今回の死亡事故には衝撃を受けたという。
「もともとクマの目撃情報はありますが、特に被害が多いという地域ではありません。むしろ、ここ最近は市街地のほうが出没情報が多かった。

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