テレビの視聴機能があるカーナビが付いた公用車で、NHKの受信契約漏れが相次いで判明している。読売新聞のまとめでは、今年10月までに、都道府県や県庁所在地など主要な122自治体のうち半数以上の73自治体で判明。このほか、少なくとも約200市町村が未契約だった。一方、公用車でテレビを視聴していない自治体もあり、一部からは徴収ルールの見直しを求める声も上がっている。(東北総局 市江航大)
設置場所ごとに契約必要
「受信契約に対する認識が不足していた」。仙台市では8月、公用車のカーナビ35台の契約漏れが判明。市庁舎管理課の課長は陳謝し、業務用テレビなど41台の未払い分も含め、今年度中に計約730万円を支払う考えを示した。だが、市幹部は「移動中は打ち合わせや書類の確認で忙しい。テレビは見ていないのに」と話す。
テレビが視聴可能なカーナビは、放送法で規定された「協会の放送を受信することのできる受信設備」に該当。NHKの放送受信規約によると、一般家庭はテレビの受信契約を結んでいれば、自家用車も住居の一部と見なしてカーナビの契約は不要だ。
一方、会社や官公庁は受信機の設置場所(部屋、自動車など)ごとに契約が必要で、車1台あたりの受信料は1年払いの場合で1万2276円(2台目以降は半額)となる。
公用車の受信契約漏れは、今年2月以降に相次いで判明した。読売新聞のまとめでは、都道府県で31、県庁所在地で27、東京23区で11、県庁所在地を除く政令市で4の自治体に上った。受信料の未払い額が数千万円になるケースもあり、宮城県庁では193台で計約2050万円、埼玉県庁では約370台で計約4800万円だった。
新たな対応として、257台が未契約だった群馬県庁では、カーナビを含めた不要なテレビの視聴機器の撤去を進めている。92台が未契約だった愛媛県庁もカーナビ購入時に、災害対応などで必要な車を除きテレビの視聴機能がないものを選ぶなどしている。
NHK「負担の在り方の検討」も
首長からも様々な意見が上がっている。熊本市の大西一史市長は8月の記者会見で、「公用車ではニュースを見ており、災害情報などは危機管理上有益なものだ」とした上で、公用車については特例で支払いの免除などを検討するようNHK側に求めた。
岐阜県の江崎禎英知事は10月の県議会答弁で、「明らかに見る予定がない機器にまで県民の税金を払い続けるのは適切ではない」と主張。契約方法の見直しなどの検討を求めるため、NHK放送センター(東京)を訪問する考えを示し、「協議結果を全国知事会と共有し、全国的な議論を促していきたい」と述べた。
NHK広報局は読売新聞の取材に「受信料の手続きを正確に認識してもらえるよう丁寧に周知していく」とコメント。受信料については「現時点で割引や免除の拡大は予定していないが、自治体や事業所の負担のあり方について、引き続き検討していく必要があると考えている」としている。